40代の新NISAは、つみたて投資枠を土台にし、教育費などが減った後に増額する二段階設計が現実的である。
商品は「40代だからこれ」と決めるのではない。使う時期と値下がりへの耐性から、全世界株式型・米国株式型・バランス型などを選び分けることが重要だ。
40代の新NISAはどう使う?満額より「続けられる設計」が先
40代から新NISAを始めるなら、基本はつみたて投資枠で長期・積立・分散の土台をつくり、余力がある場合に成長投資枠を組み合わせることだ。
金融庁の「NISAを知る」によると、2024年1月に始まった現在のNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円。併用すれば年間最大360万円まで投資できる。非課税保有期間は無期限で、非課税保有限度額は合計1,800万円、このうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までである。
項目 つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 120万円 240万円
主な投資方法 積立 積立・一括購入
主な対象 長期・積立・分散に適した一定の投資信託など 上場株式・投資信託など
非課税保有期間 無期限 無期限
併用 可能 可能
非課税保有限度額 2枠合計1,800万円 うち1,200万円まで
ここで最初に捨ててほしい考えがある。
年間360万円を使い切らなければ損だ、という発想である。
360万円は制度上投資できる上限であり、40代が投資すべき金額ではない。
私は食品製造の品質管理に携わっているが、設備の「最大能力」と「安定して運転できる能力」を同じものとは考えない。
毎分100個処理できる設備でも、100個で常時運転すれば不良や停止が増えるなら、それは適正条件ではない。
NISAも同じだ。
家計が月3万円なら安定するのに、枠を埋めたい一心で月10万円を投じ、教育費が必要になって売却する。これでは最大能力ばかり追い、安定稼働を捨てた状態である。
40代には、住宅ローン、子どもの高校・大学進学、車の買い替え、住宅修繕、親の介護など、投資とは別に資金を要求される場面がある。
だから最初に見るべきなのはNISA枠ではない。
家計のキャッシュフローである。
なお、2018年に始まった旧つみたてNISAは2023年で新規買付けを終え、2024年から現在のNISA制度へ移行した。金融庁によれば、2023年までのNISAで購入した商品は現在の1,800万円とは別枠で管理され、旧制度の非課税措置が適用される。
したがって2026年現在、新しく始める人が利用するのは現行NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」である。
さらに金融庁が2026年7月3日に公表した「NISA口座の利用状況調査(令和7年12月末時点)」では、調査対象をNISA取扱全金融機関として口座数や買付額を集計している。
2025年12月末時点のNISA口座数は2,821万口座、制度開始からの累計買付額は71兆円だった。2024年末の2,559万口座・53兆円からさらに増えており、NISAの利用が拡大していることが分かる。
しかし、利用者が増えたことと、あなたが満額投資すべきことには何の関係もない。
ここを混同してはいけない。
40代のNISAはいくら積み立てる?平均額より家計から逆算する
40代のNISAに「月いくらなら正解」という共通解はない。
同じ年収700万円でも、大学生が2人いる家庭と独身者では余裕資金が違う。住宅ローン、預貯金、配偶者の収入、退職予定年齢によっても条件は変わる。
参考になる数字はある。
マネーキャリアが2026年7月17日に更新した記事では、金融庁の2025年6月末時点データを基に独自算出した年代別平均として、40代の積立額を月70,310円と掲載している。
重要なのは出典の読み方だ。
この70,310円は、金融庁が「40代の平均積立額は70,310円です」と直接発表した数字ではない。
二次媒体が金融庁データを基に算出した数値である。
さらに同記事は、40代のおすすめ額については平均積立額とは別に「月4万円」とし、40代の平均月収の約10%を目安に算出している。月4万円を40歳から60歳まで20年間積み立てた場合、元本は960万円になるというシミュレーションも掲載されている。
つまり「平均70,310円」と「おすすめ4万円」は、そもそも計算の意味が違う。
ネット上に数字が出ているからといって、自分の家計へコピーしてはいけない。
私は40代の積立額を、次の3軸で判断する。
- 必要時期:その資金を何年後に使う予定なのか
- 流動性:突然まとまった出費が出ても現金で対応できるか
- リスク許容度:例えば20~30%程度値下がりしても、慌てて売却せず保有を続けられるか
最後の20~30%は公的な基準ではない。
「それほど大きな値下がりが起きた場面を想像しても継続できるか」というストレステストの例である。
40代では、この確認が極めて重要だ。
例えば45歳で、現在の投資余力が月3万円だとする。
子どもの教育費負担が52歳ごろに大きく減るなら、最初から無理に月8万円を投資する必要はない。
45~51歳:3万円×12カ月×7年=252万円
52~64歳:8万円×12カ月×13年=1,248万円
運用益を考えなくても、65歳までの拠出元本は合計1,500万円になる。
もちろん、これはあくまで設計例であり、この金額を推奨しているわけではない。
ここで見てほしいのは金額ではなく構造だ。
40代の積立額は「今いくら出せるか」だけではなく、「今後どの支出がいつ終わるか」まで含めて決める。
これが私の考える「二段階積立」である。
教育費のピークで月10万円を無理やり投資し、家計が苦しくなって積立を止める。
それより月3万円を確実に継続し、教育費が減った後に5万円、8万円と増額するほうが設計として強い。
40代では、「少額で始めること」を恥じる必要はない。
途中で資金ショートする設計のほうを警戒すべきだ。
40代の新NISAでは何を選ぶ?おすすめ商品タイプを比較
「40代のNISAでは何を買えばいいのか」。
ここでいきなり商品ランキングを開くのは順番が逆である。
先に決めるのは、そのお金をいつ使うかだ。
3年後の大学進学に必要な300万円と、20年後の老後資金300万円は、同じ300万円でも扱いがまったく違う。
数年後に確実に必要なお金を株式へ投資すれば、使う直前に価格が下落する可能性がある。
一方、10年、15年、20年と使わない資金なら、短期的な値動きを受け入れながら運用する余地が広がる。
つまり基本原則は単純である。
近く使うお金は守り、遠く使うお金だけを投資候補にする。
そのうえで、つみたて投資枠で検討されやすい商品タイプを整理すると次のようになる。
商品タイプ 主な特徴 値動きの考え方 向きやすい人 注意点
全世界株式型 日本を含む世界各国の株式へ広く分散 大きく上下する可能性がある 1本で地域分散したい人 株式100%なら元本保証はなく、大幅下落もあり得る
米国株式型 主に米国株式へ投資 米国市場の影響を強く受ける 米国企業の成長性を重視する人 投資地域が米国へ集中する
国内外株式型 日本と海外株式を組み合わせる 株式市場全体の影響を受ける 地域配分を確認しながら投資したい人 商品ごとに配分が異なる
バランス型 株式に加えて債券など複数資産へ分散 株式100%より値動きを抑える設計の商品もある 値動きの大きさを抑えたい人 株式中心の商品より上昇局面で伸びが小さい場合がある
これは「全世界株式型が一番」「米国株式型が正解」というランキングではない。
40代という年齢だけで商品を決めることはできないからだ。
例えば45歳でも、20年以上使わない老後資金を運用し、大きな値動きを受け入れられる人なら株式比率の高い商品を検討できる。
反対に55歳で10年以内に使う予定があり、大幅な値下がりに耐えられないなら、同じ戦略をそのまま使う必要はない。
商品を見るときは最低でも、
- どの国・地域へ投資するのか
- 株式・債券など何へ投資するのか
- インデックス型かアクティブ型か
- 信託報酬など継続的にかかるコストはいくらか
- 1本でどこまで分散されているか
- 大きく下落しても保有を続けられるか
を確認してほしい。
金融庁によれば、つみたて投資枠では長期・積立・分散投資に適した一定の商品が対象となる一方、成長投資枠では上場株式など、より広い商品へ投資できる。両枠は併用可能である。
だが、「成長投資枠」という名前に惑わされるな。
成長投資枠を使えば、つみたて投資枠より高いリターンが約束されるわけではない。
名称は制度上の区分であり、投資成果を保証するものではない。
投資初心者なら、つみたて投資枠だけから始めても何ら問題はない。
むしろ最初から全世界株式、米国株式、高配当株、個別株、ETFと何種類も詰め込むと、自分が何へ投資しているのか把握できなくなる場合がある。
品質管理でも、管理項目を増やせば自動的に品質が上がるわけではない。
必要な項目を明確にし、管理できる状態にすることが重要だ。
投資も同じである。
自分の言葉で中身を説明できる商品だけを持つ。
これを一つの基準にしてほしい。
40代から新NISAを始めるには?5ステップで資金計画を作る
NISA口座を開く操作自体は難しくない。
難しいのは、その前に「投資してよいお金」と「投資してはいけないお金」を分けることだ。
ステップ1:何のために投資するか決める
老後資金なのか。
15年以上先の資産形成なのか。
目的によって運用できる期間が変わる。
「とりあえずNISA」では、暴落したときに保有を続ける理由も売却する基準もなくなる。
ステップ2:数年以内に使う資金を取り分ける
生活費、緊急予備資金、進学費用、車の購入費、住宅修繕など、近い将来に必要となるお金は先に確認する。
投資信託や株式には元本保証がない。
必要になったときNISAを売ればいい、と考えることはできるが、その日に価格が上がっている保証はない。
使う日を選べないお金ほど、相場に預けない。
40代では特に重要な考え方である。
ステップ3:NISA口座を開設する金融機関を決める
金融庁によると、NISA口座は1人1口座で、金融機関の変更は年単位で可能である。
証券会社や銀行を選ぶときは、単発のキャンペーンだけで判断しない。
取扱商品、積立方法、最低積立額、アプリやWeb画面の使いやすさ、サポート、決済手段など、自分が長く使えるかを見るべきだ。
ポイント還元や決済サービスなどは変更されるため、利用するときは各金融機関の最新情報を確認してほしい。
ステップ4:商品と毎月の積立額を決める
最初からつみたて投資枠の月換算上限である10万円を入れる必要はない。
月1万円でも2万円でもいい。
家計が安定し、教育費や住宅費を圧迫せず継続できる金額で始める。
商品も同様だ。
人気順位ではなく、投資対象、分散、コスト、値動きを理解できるものから検討する。
ステップ5:自動積立し、家計が変わったときに増減する
積立投資では、毎日値動きを確認する必要はない。
むしろ確認すべきなのは、家計の変化だ。
昇給、転職、子どもの卒業、住宅ローン完済など、キャッシュフローが変わったときに積立額を見直す。
ここが40代NISAの重要ポイントである。
投資商品は長期保有でも、家計まで20年間固定ではない。
だから積立額を一生同じにする必要もない。
NISAとiDeCoは40代ならどう使い分ける?
40代ではNISAとiDeCoを比較する人も多いが、違いを複雑に考えすぎる必要はない。
最大の判断材料は途中でお金を使える必要があるかである。
iDeCo公式サイトでは、iDeCoを自分で掛金を拠出し、自分で商品を選んで運用する私的年金制度と説明している。また原則として60歳になるまで資産を引き出せない。
この制約は40代では軽視できない。
老後まで使わないと明確に決められる資金なら、iDeCoの税制上のメリットを検討する価値がある。
一方、老後資金として育てたいものの、家庭の事情によって50代で必要になる可能性がある資金なら、売却できるNISAのほうが流動性は高い。
私は40代なら、
当面必要な現金を確保する → NISAを検討する → 老後まで拘束できる余力についてiDeCoも検討する
という順番で整理すると分かりやすいと考える。
もちろん、iDeCoの加入可否や拠出条件などは働き方や企業年金の状況などによって異なる。
ここは個人条件を確認する必要がある。
そして忘れてはいけない。
NISAもiDeCoも「利益を保証してくれる商品」ではない。
NISAは投資から得られる利益を非課税にする制度であり、価格下落を防いでくれる制度ではない。金融庁も、NISA口座で商品を売却しても損益自体がなくなるわけではないと明記している。
制度が優れていても、買う商品と資金管理が間違っていれば損失は起こる。

私見|40代の新NISAは「支出が終わる年」まで設計して初めて強くなる
筆者として40代の新NISAで最も重要だと考えるのは、現在の積立額ではなく、将来の増額ポイントまで先に決めることである。
これが、この記事でいう二段階積立の核心だ。
40代の家計には独特の特徴がある。
45歳では教育費が重い。
50代前半で子どもの教育費が終わる。
その後に住宅ローンが完済する。
こうした家庭なら、投資余力は一直線ではない。
途中から大きく変化する。
にもかかわらず、「40代の平均積立額はいくらか」という一つの数字だけを見てNISAを始めれば、現在の家計しか反映できない。
私はここに大きな弱点があると考える。
例えば、教育費として毎月5万円支出していた家庭で、その支出が52歳に終了したとする。
重要なのは52歳になってから「余った5万円をどうしよう」と考えることではない。
45歳の段階で、
52歳になったら5万円のうち3万円をNISAへ追加する
と決めておく。
これだけで資産形成の設計は変わる。
住宅ローンについても同様だ。
月6万円の返済が終わった直後、その6万円をすべて生活水準の引き上げへ使えば、数年後にはそれが普通の支出になる。
人間は増えた可処分所得に生活を合わせる。
ならば支出が消えた瞬間に、一部を自動積立へスライドさせたほうがいい。
私は品質管理の仕事で、トラブルが起きた後に対策するだけでは不十分だと考えている。
重要なのは「どこで条件が変わるか」を予測し、あらかじめ管理条件を決めておくことである。
40代の資産形成も同じだ。
教育費終了年、住宅ローン完済年、退職予定年をNISAの増額ポイントとして管理する。
これが40代だからこそ使える強みである。
ただし、支出が減ったから必ず投資を増やすという話でもない。
親の介護、住宅修繕、転職、収入減少などが見込まれるなら、現金を増やす判断も当然ある。
だから増額前には再び、
必要時期。
流動性。
リスク許容度。
この3点を確認する。
20代より投資期間が短いという理由だけで、40代から始めることを諦める必要はない。
45歳から65歳まででも20年ある。
一方で、「20年あるのだから株式100%で問題ない」と年齢だけで決めることも危険だ。
何歳まで働くのか。
いつから取り崩すのか。
退職後にも株式を保有するのか。
現金や年金など他の資産はどの程度あるのか。
答えによって適切な資産配分は変わる。
私は、40代のNISAではリターンを最大化することより、暴落と大型支出が重なっても投資計画を壊さないことのほうが重要だと考えている。
資産形成は100メートル走ではない。
途中で棄権しない工程管理である。
まとめ|40代の新NISAは商品より先に家計を設計する
40代の新NISAでは、つみたて投資枠を長期資産形成の土台とし、生活防衛資金や数年以内に使う教育費などを確保した後の余剰資金から始める方法が現実的である。
現在のNISAは、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で年間最大360万円。非課税保有限度額は1,800万円、非課税保有期間は無期限である。
しかし、満額を使うことが目的ではない。
積立額は平均値ではなく、必要時期・流動性・リスク許容度から決める。
商品についても同じだ。
全世界株式型、米国株式型、バランス型にはそれぞれ特徴があり、「40代なら一律にこれ」という答えはない。
今の家計に余裕が少なければ、小さく始めればいい。
そして教育費が終わる。
住宅ローンが完済する。
収入が増える。
そのタイミングで積立額を引き上げる。
45歳時点の積立額だけを見るのではなく、45歳から65歳までのキャッシュフローを一つの工程として設計する。
これが40代の新NISAで私が最も重視する考え方である。
焦って満額を目指す必要はない。
理解できる商品を選び、無理のない金額で始め、余力が増えたときに加速する。
派手ではない。
だが、途中で崩れにくい。
資産形成で最後にものを言うのは、一時の勢いではなく継続できる設計である。
よくある質問
40代から新NISAを始めるのは遅いですか?
40代だから遅すぎるとは言えない。
例えば45歳から65歳までは20年間ある。重要なのは過去に始めなかったことを悔やむことではなく、今後使う資金を確保し、そのうえで長期間運用できる余剰資金を積み立てることである。
40代のNISAは月いくら積み立てればいいですか?
一律の正解はない。
マネーキャリアの2026年7月17日更新記事では、金融庁の2025年6月末時点データから独自算出した40代の平均積立額として月70,310円が掲載されているが、これは金融庁が直接示した推奨額ではない。
平均を追うのではなく、教育費、住宅ローン、預貯金、数年以内の大型支出を確認し、余剰資金から決めるべきである。
40代なら全世界株式と米国株式のどちらがおすすめですか?
年齢だけでは決められない。
全世界株式型は投資地域を世界へ広く分散しやすく、米国株式型は米国市場への集中度が高くなる。どちらを選ぶ場合でも、運用期間、投資地域、コスト、値動きへの耐性を確認することが重要だ。
「どちらが今後最も上がるか」を当てるより、下落時にも自分が保有し続けられる商品を選ぶことを優先したい。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター
