40代のNISAは、平均額に合わせるのではなく、教育費・生活防衛資金を除いた「長期間使わないお金」から積立額を決めるべきである。
最新の公表資料では40代のNISA口座数や年間買付額まで確認できる。ただし、そこから「40代の平均積立額」をそのまま断定することはできない。数字の意味を正しく読み、月1万円、3万円、5万円、10万円のどこが自分に合うのか判断していこう。
40代のNISA平均はいくら?2025年の年代別データを確認
「40代はNISAに毎月いくら投資しているのか」。
最初に知りたいのはここだろう。
日本証券業協会が2026年7月22日に掲載した「NISA口座の開設・利用状況(2025年12月末時点)」では、全金融機関を対象とした年代別のNISA口座数と2025年1〜12月の新規買付額が公表されている。資料は2025年12月末の確報値である。日本証券業協会+1
40代について見ると、2025年12月末時点のNISA口座数は約538万口座。
2025年1〜12月の新規買付額は、成長投資枠が2兆4,298億円、つみたて投資枠が1兆4,763億円、合計3兆9,061億円である。日本証券業協会
これはかなり重要なデータだ。
40代だけでも500万を超えるNISA口座があり、年間で約3.9兆円が買い付けられている。NISAが一部の投資好きだけの制度ではなく、40代の資産形成にも広く使われている状況が見える。
ただし、ここからいきなり、
「40代の平均積立額は月○万円」
と断定してはいけない。
たとえば40代のつみたて投資枠買付額1兆4,763億円を、40代のNISA口座数約538万口座と12か月で機械的に割ると、1口座当たり月約2万2,900円相当になる。
だが、この約2万2,900円は実際に積立投資をしている40代だけの平均月額ではない。
NISA口座を持っていても、つみたて投資枠を使っていない人が含まれる可能性がある。
年初にまとめて投資した人もいる。
年途中にNISAを始めた人もいる。
途中で積立額を変更した人もいる。
だから正確には、
「2025年の40代のつみたて投資枠買付額を、年末時点の40代NISA口座数と12か月で割った参考上の月額換算値」
である。
ここを混同してはいけない。
さらに全金融機関で見ると、2025年12月末のNISA口座数は約2,821万口座。2023年12月末の約2,125万口座から約696万口座増えている。2025年の新規買付額は成長投資枠が12兆5,138億円、つみたて投資枠が6兆2,349億円、合計18兆7,487億円だった。日本証券業協会
つまり、NISA利用そのものは大きく広がっている。
しかし、周囲が始めたからといって焦る必要はない。
品質管理の現場でも、平均値だけを追えば工程の異常を見逃す。
家計も同じだ。
年収、住宅ローン、子どもの人数、教育費、現預金、退職予定年齢が違う以上、平均額だけを自分の目標値にするのは雑すぎる。
40代のNISAで見るべき最初の数字は、他人の平均ではなく自分のキャッシュフローである。
40代のNISAはいくらが適正?月1万・3万・5万・10万円の考え方
では、自分はいくら積み立てればよいのか。
筆者としては、家計に一定の余裕がある40代なら、月2万〜5万円程度を最初の検討レンジにするのは現実的だと考えている。
ただし、誤解してはいけない。
月2万〜5万円は「40代の平均額」でも「正解」でもない。
あくまで教育費や住宅費を抱えやすい40代が、長期投資を継続できる金額を考えるための参考レンジである。
毎月の積立額 年間投資額 考え方
1万円 12万円 教育費などを優先しながら投資を継続したい
2万円 24万円 家計を圧迫せず資産形成を始めたい
3万円 36万円 長期積立と家計余力を両立したい
5万円 60万円 生活防衛資金を確保し、黒字家計に余裕がある
10万円 120万円 つみたて投資枠を年間上限まで利用できる余力がある
月10万円を投資できる人が優秀で、月1万円しか投資できない人が遅れているわけではない。
この比較意識は捨てた方がいい。
年収600万円でも、子ども2人の大学進学が近く、住宅ローンがあり、現金が十分でなければ月10万円は重い。
反対に、住宅ローンが完済し、教育費のピークを越え、共働きで十分な現金を確保している家庭なら、月10万円でも余裕がある場合はある。
年齢だけでは、適正なNISA積立額は決まらない。
もう一つ重要なのが、「値下がりに耐えられる気持ち」と「値下がりしても生活に困らない家計」は別物だという点だ。
一般に投資ではリスク許容度という言葉が使われる。
だが40代では、それだけでは足りない。
株価が30%下がっても精神的には平気でも、2年後に子どもの大学資金300万円が必要ならどうするのか。
必要な時期に相場が低迷していれば、損失を抱えた状態で売却せざるを得ない可能性がある。
つまり、
投資できる額とは「今払える額」ではない。「相場が下落しても取り崩さずに済む額」である。
ここを基準にすべきだ。
40代のNISA積立額はどう決める?お金を「使用期限」で分ける
私はNISAの金額を決める前に、手元のお金を使用期限で3つに分けることを勧める。
- 数年以内に使う教育費・住宅費・車購入費など
- 病気・失業・急な出費に備える生活防衛資金
- 10年以上使う予定がない長期資金
NISAへ回す中心は、原則として3つ目の長期資金である。
「普通預金に300万円あるから、全部NISAへ入れよう」。
そんな判断は早すぎる。
その300万円は本当に余裕資金なのか。
2年後の大学進学費用ではないか。
自宅の外壁や屋根の修繕費ではないか。
車の買い替え予定はないか。
親の介護や転職による収入減へ備える現金は足りているか。
投資を始める前に確認すべきことはいくらでもある。
仮に3年後に300万円必要だと分かっているのに、その300万円を株式中心の投資信託へ入れたとしよう。
3年後に市場が大きく下落していたらどうするのか。
「いつか価格は戻るかもしれない」と待ちたくても、大学の入学金や授業料の納付期限は待ってくれない。
投資では「どれだけ下落するか」ばかりが注目される。
だが40代の家計では、もう一つ見るべきリスクがある。
それが資金を使う時期と相場下落が重なるリスクだ。
私はこれを、家計管理の視点から「期限のリスク」と考えている。
10年以上使わない資金なら、相場が下落しても保有を続ける時間を確保しやすい。
数年以内に使う資金には、その時間がない。
同じ100万円でも、
「来年使う100万円」と、
「15年間使わない100万円」は、
まったく別の金である。
したがって、NISAの積立額は次の順番で決める。
①近い将来に必要なお金を現金で分ける
②生活防衛資金を確保する
③毎月残る黒字から、長期投資へ回せる額を決める
月1万円しか残らないなら1万円でいい。
3万円なら無理なく続けられるなら3万円。
5万円を投資しても十分な現金が残るなら5万円を検討すればいい。
問題は「今月払えるか」ではない。
株価が大きく下落した翌月も、同じ積立を冷静に続けられるか。
そこまで確認して初めて、その金額は自分の家計に合っている。
40代で月1万・3万・5万・10万円なら20年後はいくら?
40代からNISAを始める場合、「もう遅い」と焦る人は少なくない。
だが45歳から65歳まででも20年ある。
積立額による違いを数字で確認してみよう。
毎月一定額を20年間積み立て、年5%で運用できたと仮定した概算は次の通りである。
毎月の積立額 20年間の元本 年5%想定の概算
1万円 240万円 約411万円
3万円 720万円 約1,233万円
5万円 1,200万円 約2,055万円
10万円 2,400万円 約4,110万円
当然だが、年5%で毎年一定に増えるわけではない。
これは将来の収益を保証する数字ではなく、一定条件を置いたシミュレーションにすぎない。
実際の市場では大きく上昇する年もあれば、大きく下落する年もある。
投資対象、購入時期、信託報酬、為替などによっても結果は変わる。
だから、この表から「月5万円なら20年後に2,055万円になる」と断定してはいけない。
見るべきなのは別の部分だ。
投資額と時間の差は大きい。
月1万円と月5万円では、20年間の元本だけで960万円の違いがある。
ここから40代が学ぶべきなのは、「少しでも高い利回りの商品を探すこと」だけが資産形成ではないということだ。
むしろ、自分でコントロールしやすいのは入金力である。
たとえば固定費を月1万円減らし、その1万円を15年間積み立てれば、元本だけで180万円になる。
住宅ローン完済後に月3万円増額できれば、年間36万円。
教育費が落ち着いた後に月5万円増額できれば、5年間でも元本300万円を追加できる。
市場のリターンは自分では決められない。
しかし、
収入を増やす。
固定費を見直す。
教育費終了後の余剰資金を投資へ振り向ける。
住宅ローン終了後の返済額を積立へ回す。
こうした入金設計は自分で調整できる。
私は40代では、無理に高い運用利回りを狙うより、家計から継続的に投資資金を生み出す仕組みを作る方が重要だと考えている。
教育費がある40代はNISAを減らしていい?
結論から言えば、減らしていい。
むしろ教育費が増えているのに、NISAだけを聖域化してはいけない。
40代の家計で大きな影響を与えやすいのが、高校・大学進学などの教育費である。
私は40代のNISAでは、年齢だけでなくライフイベントの進行に合わせて積立額を変える方が合理的だと考えている。
たとえば、
教育費のピーク前は月3万円。
進学費用が重なる数年間は月1万円。
教育費が落ち着けば月5万円。
住宅ローン完済後は月8万円。
こうした変更があっていい。
NISAには「一度決めた積立額を最後まで守らなければならない」というルールはない。
家計が変わったなら、投資額も変えていい。
むしろ変えるべきである。

私は40代の積立設計を、「前半守備型・後半加速型」で考えるのも有効だと思っている。
40代前半から半ばは、教育費や住宅費を優先して投資額を抑える。
教育費のピークを越えたら積立額を増やす。
住宅ローンが終われば、さらに増額する。
この方法なら、現在の生活を極端に削らず、将来の入金力も活用できる。
40代には20代より運用できる時間が短いという弱点がある。
しかし一方で、住宅ローンの終了時期、子どもの卒業時期、定年までの年数など、今後の家計イベントが具体的に見えやすいという強みもある。
そこを使うのだ。
「45歳なのだから急いで月10万円投資しなければ」。
そんな焦りはいらない。
月5万円を無理して3年間積み立て、4年目に教育費不足で売却するくらいなら、月2万円を継続し、教育費終了後に5万円へ増額する方が家計設計としては整合的である。
焦って必要資金まで市場へ投入することを、積極投資とは呼ばない。
それは単なる資金管理の失敗になり得る。
40代ならNISAの年間360万円を使い切るべき?
使い切る必要はない。
金融庁によると、2024年からのNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円。両方を併用すると年間最大360万円まで投資できる。
さらに非課税保有期間は無期限で、非課税保有限度額は1,800万円。そのうち成長投資枠で利用できる上限は1,200万円である。金融庁
つみたて投資枠120万円を12か月で割れば月10万円。
年間360万円を12か月で均等に割れば月30万円になる。
数字だけを見ると、「使わなければ損なのではないか」と思うかもしれない。
違う。
年間360万円はノルマではない。上限である。
ここを間違えてはいけない。
月3万円しか長期投資へ回せない家計が、年間枠360万円を見て焦る理由はない。
教育資金を削る必要もない。
生活防衛資金を減らす必要もない。
NISAの非課税メリットは、投資元本そのものが節税される仕組みではない。
金融庁は、通常は株式や投資信託を売却して得た利益や配当に約20%の税金がかかる一方、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になると説明している。金融庁
たとえば100万円をNISAへ入れた瞬間に約20万円得をするわけではない。
非課税になるのは、対象となる運用益や配当・分配金である。
だから、
「非課税枠が余るともったいない」
という理由だけで、2年後に必要な200万円を投資へ回してはいけない。
200万円をNISAへ入れた後、必要な時期に150万円まで値下がりしていれば、税制上のメリット以前の問題になる。
また金融庁によれば、NISAで保有する商品を売却した場合、売却商品の簿価、つまり取得金額分の非課税保有限度額は翌年以降に再利用できる。金融庁
したがって、
「今すぐ総枠1,800万円を埋めなければならない」
という制度ではない。
40代ほど、枠より資金用途を優先すべきだ。
NISAは税制上有利な制度だが、投資商品の価格変動まで消してくれる制度ではない。
「非課税」と「安全」は別物である。
40代のNISAはいくらにする?平均より「期限」で決める
ここからは筆者としての考えである。
40代のNISAで最も重要な数字は、平均積立額でも年間360万円でもない。
「そのお金を何年後に使うのか」である。
2025年のデータでは、40代のNISA口座は約538万口座あり、年間新規買付額は約3.9兆円に達している。NISAが40代の資産形成に広く利用されていることは間違いない。日本証券業協会
しかし、他の40代が多額を投資しているからといって、自分まで同じ金額を入れる必要はない。
40代には教育費、住宅ローン、自宅修繕、車の買い替え、親の支援や介護など、現金需要が重なりやすい。
ここで投資額だけを最大化すると、「金融資産はあるのに現金がない」という状態を招きかねない。
私は、40代の資産形成では資産額と同時に資金の期限を管理するべきだと考えている。
1年以内に使う100万円。
5年以内に使う100万円。
15年以上使わない100万円。
額面は同じ100万円でも、投資に回せる性質はまったく異なる。
そして、積立額を決めるときには次の感覚で十分だ。
月1万円。
教育費などの負担が大きく、現金確保を優先したいなら立派な選択肢である。
月2万〜3万円。
生活防衛資金を残しながら、無理なく長期積立を続けたい場合に検討しやすい。
月5万円。
教育費や住宅費を確保したうえで、毎月の黒字が安定しているなら有力だ。
月10万円。
つみたて投資枠の年間120万円を使う水準だが、十分な余裕資金がある人だけが選べばいい。
そして積立額は、少なくとも年1回程度は家計と一緒に点検した方がよい。
昇給した。
転職した。
教育費が増えた。
子どもが卒業した。
住宅ローンが終わった。
現金資産が増えた。
こうした変化があれば、積立額も再設定すればいい。
ここで私が重視しているのが、「最初の積立額」より「増額できる時期をあらかじめ決めておく」ことである。
多くの人は月3万円か5万円かで悩む。
だが、本当に差がつくのは初期設定だけではない。
「住宅ローン完済後は返済していた3万円をNISAへ回す」
「大学卒業後は教育費として出ていた5万円のうち3万円を積立へ回す」
といった増額ルールまで設計しておけば、家計の改善がそのまま資産形成につながる。
私はこれを、40代ならではの強みだと考えている。
20代には長い時間がある。
40代には、今後の支出減少をある程度予測できる強みがある。
時間の短さだけを嘆く必要はない。
家計イベントを投資の加速装置へ変えればいい。
40代から資産形成を始めると、「残された時間」に目が向きがちだ。
しかし焦って投資額を増やし、生活資金が足りなくなれば意味がない。
45歳から65歳までなら20年。
60歳になった瞬間にすべての運用を終了する必要もない。
長期投資で重要なのは、高い金額を一瞬だけ入れることではなく、必要資金を守りながら市場に残り続けられる設計を作ることだ。
月10万円を入れられないからと落ち込む必要はない。
月1万円でもいい。
3万円でもいい。
5万円でもいい。
必要なお金を確保したうえで、下落相場でも続けられる金額。それが今のあなたにとっての適正額である。
平均値は参考資料にすぎない。
NISAの年間360万円も上限にすぎない。
他人の家計と競う制度ではない。
40代のNISAは、
①数年以内に使う資金を現金で確保する
②生活防衛資金を残す
③10年以上使わない資金から積立額を決める
④教育費や住宅費の変化に応じて積立額を増減する
この順番で設計すればいい。
40代で問われるのは「今年いくら投資したか」だけではない。
家計を壊さず、必要なお金を守りながら、10年、20年と資産形成を続けられる設計になっているか。
そこから目をそらしてはいけない。
よくある質問
40代のNISA平均積立額はいくらですか?
2025年の日本証券業協会資料では、40代のNISA口座数は約538万口座、つみたて投資枠の年間新規買付額は1兆4,763億円である。日本証券業協会
これを口座数と12か月で単純に割ると月約2万2,900円相当だが、実際に積立投資をしている40代だけを対象にした「平均月額」ではない。
あくまで年代別公表値を使った参考上の換算値として見るべきである。
40代からNISAを月1万円だけ始めても意味はありますか?
月1万円でも20年間積み立てれば元本は240万円になる。
教育費などで家計余力が小さい時期は、無理に5万円、10万円へ増やすより、月1万円を継続して後から増額する方法も現実的である。
ただしNISAで購入する金融商品には価格変動があり、元本割れする可能性がある。
40代ならNISAを月10万円積み立てるべきですか?
必須ではない。
月10万円なら年間120万円となり、現行NISAのつみたて投資枠を年間上限まで利用する計算になる。つみたて投資枠120万円は利用可能額の上限であり、達成しなければならない目標額ではない。金融庁
教育費、住宅費、生活防衛資金、数年以内に必要となる現金を確保し、それでも十分な余力がある場合に検討すればよい。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

