40代からNISAを始めても遅くはない。15〜25年前後の運用期間を取れるなら、今から始める意味は十分にある。
ただし、遅れを取り戻そうと無理に投資額やリスクを上げるのは逆効果だ。40代に必要なのは焦りではなく、残された時間と家計を数字で管理することである。
40代からNISAを始めるのは本当に遅いのか?
結論から言えば、「40代だからNISAはもう遅い」と決めつける必要はない。
確かに、20代から始めた人より投資に使える時間は短い。これは認めなければならない。長期投資では運用期間が重要であり、早く始めた人ほど時間を味方につけやすい。
しかし、「20代より遅い」と「今から始めても意味がない」は別問題である。
45歳から65歳までなら20年、40歳なら25年、49歳でも65歳まで16年ある。さらに現在のNISAには「65歳になったら終了する」という仕組みはない。
金融庁によると、2024年からのNISAは非課税保有期間が無期限となり、制度自体も恒久化された。したがって、老後資金を65歳ですべて現金化する必要がなければ、その後も保有を続けることができる。金融庁
40代の利用実態を見ても、「今さら始める世代」と切り捨てられる状況ではない。
金融庁が2026年7月3日に公表した「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」は、NISA取扱全金融機関を対象とした調査である。NISA口座総数は2,820万6,434口座、そのうち40歳代は538万1,768口座だった。40代の構成比は約19.1%である。金融庁
同じ金融庁資料では、2025年6月末時点の40歳代は515万9,182口座であり、12月末までの半年間で約4.3%増加している。
つまり、2025年末時点ではNISA口座のおよそ5口座に1口座が40代だった。
ここで重要なのは、「みんなやっているから自分もやれ」という話ではない。
資産形成で見るべきなのは他人の開始年齢ではなく、自分のお金をこれから何年間運用できるのかである。
20年前に始めなかった事実は変えられない。だが、その後悔を理由にこれからの20年まで捨てるのは、数字として合理的ではない。
40代からNISAを始めると20年でいくら積み立てられる?
45歳から65歳まで20年間積み立てるだけでも、元本は決して小さくない。
例えば毎月1万円、3万円、5万円を20年間積み立てた場合を比較すると次のようになる。
毎月の積立額 20年間の元本 年率3%で運用した参考試算
1万円 240万円 約328万円
3万円 720万円 約985万円
5万円 1,200万円 約1,642万円
参考試算は、毎月末に積み立て、年率3%を12で割った月利0.25%で20年間複利運用すると仮定した単純計算である。税金、信託報酬などのコスト、実際の値動きは簡略化している。
当然だが、年率3%で運用できることを保証する数字ではない。
市場は毎年きれいに3%ずつ上がるものではない。大きく上昇する年もあれば、下落する年もある。
それでも元本だけを見れば、月3万円を20年間積み立てると720万円、月5万円なら1,200万円になる。
ここが40代にとって重要だ。
「20代から始めていれば」と悔やみ続けても資産は1円も増えない。一方、45歳から毎月3万円を20年間積み立てれば、運用損益を無視しても積立元本は720万円になる。
20年は、何もしなくていいほど短い期間ではない。

現在のNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、併用すると年間最大360万円を利用できる。非課税保有限度額は合計1,800万円で、このうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までである。金融庁
また、NISA口座で保有する商品を売却した場合は、売却した商品の取得金額に相当する総枠を翌年以降に再利用できる。金融庁
ここで絶対に勘違いしてはいけない。
年間360万円は「投資すべき金額」ではない。制度上使える上限である。
枠を全部使えないから負けでもなければ、1,800万円を最短5年で埋めることが成功条件でもない。
教育費や住宅費まで削り、家計を苦しくしてNISA枠を埋める。
そんなものは資産形成ではない。数字の目的と手段が逆転している。
40代のNISAは毎月いくら積み立てればいい?
40代のNISAに「全員月5万円」「40代なら月10万円」といった万能の正解はない。
私は品質管理の仕事で数字を見るとき、数値そのものより先に分母・対象期間・対象者・集計条件を見る。
投資の統計も同じだ。
例えば「40代の平均投資額が月○万円」という数字を見つけても、NISA口座を持つ全員が対象なのか、実際に買付けをした人だけなのか、つみたて投資枠だけなのかで意味は変わる。
金融庁の「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」を見ると、実際の投資額には大きな幅がある。
2025年1月1日から12月31日までのつみたて投資枠では、全年代で「0円超20万円以下」が513万7,708口座だった一方、「100万円超120万円以下」も247万7,110口座あった。
40歳代だけを見ると、「0円超20万円以下」が111万4,498口座、「100万円超120万円以下」が61万3,674口座である。
さらに、2025年中につみたて投資枠で一度も買付けがなかった40歳代の口座も227万5,761口座あった。
同じ40代でも利用状況はまったく同じではない。だから他人の平均額を、そのまま自分の目標額にするべきではないのである。調査対象や公表日などは金融庁の一次資料で確認できる。金融庁
年収800万円の45歳でも、これから子ども2人の大学進学が控えている家庭と、教育費負担を終えた家庭では投資可能額が違う。
住宅ローン、自動車購入、自宅修繕、親への支援なども同じだ。
年齢だけそろえて「40代なら月○万円」と決めるのは、品質管理で製造条件を無視して平均値だけ比較するようなものだ。判断が粗すぎる。
私なら積立可能額を判断するとき、「最大でいくら入れられるか」ではなく、「大幅な下落が起きても積立を継続できるか」を確認する。
例えば30%の下落を仮のストレステストとして置いてみる。
100万円が一時的に70万円相当になっても、その資金を使う必要がなく、積立を継続できるか。
30%という数字は「必ずその幅で下落する」という予測ではない。私が家計の耐久力を考えるために置く厳しめの仮定である。
月10万円では値下がりした瞬間に不安になり売却してしまうが、月3万円なら生活を崩さず継続できる。
それなら後者のほうが、長期投資の設計としては強い。
NISAは税制上の制度であって、価格変動をなくす仕組みではない。
限度額より継続可能額を見る。
40代では、この考え方を外してはいけない。
40代からNISAを始める具体的な5ステップとは?
「NISAを始めたほうがいいのは分かった。しかし何から手を付ければいいのか」という人もいるだろう。
40代なら、いきなり商品検索を始める必要はない。順番は次の5段階で十分である。
- ①近い将来使う現金を分ける:教育費、住宅購入・修繕費、車の買い替えなど、数年以内に使う予定の資金を投資資金から外す。
- ②生活防衛資金を確保する:収入減や突然の支出があっても、NISAの商品を慌てて売却しなくて済む現金を確保する。
- ③運用期間と必要額を決める:「65歳まで20年」だけでなく、その資金を実際に何歳から使うのか、老後にいくら必要なのかを考える。
- ④NISA口座を開設し、積立額を決める:金融庁によると、日本国内に住む18歳以上であればNISA口座を開設でき、口座は1人につき1口座である。銀行や証券会社などから金融機関を選び、無理なく継続できる金額を設定する。金融庁
- ⑤対象商品を選んで積立設定する:値動き、手数料、投資対象、分散の程度などを確認し、自分の運用期間とリスク許容度に合う商品を選ぶ。設定後も年1回程度は積立額と必要額との差を確認する。
ここで順番が重要である。
多くの人は「おすすめの投資信託は何ですか?」から始めようとする。
だが40代では、商品より先に資金の使用時期を決めるべきだ。
3年後の大学進学に使う300万円と、70歳以降に使う老後資金300万円では、同じ300万円でも運用できる期間がまったく違う。
例えば3年後に必要になる300万円を株式中心の商品に投資し、その時点で仮に30%下落していれば、評価額は単純計算で約210万円になる。
これは「3年後に30%下落する」という予測ではない。
短期間では必要な時期と市場下落が重なる可能性がある、というリスクを数字で示した例である。
必要な時期に売却しなければならないなら、長期保有で回復を待つこともできない。
だから私は、40代の資産形成では「何を買えば増えるか」より先に、「このお金はいつ使うのか」を決めることを強く勧めたい。

なお、現在の正式名称は「つみたて投資枠」である。
「つみたてNISA」は2023年までの旧制度であり、2024年から新制度へ移行した。2023年までに旧NISAで購入した商品は、2024年以降のNISAとは別枠で管理され、旧制度の非課税措置が適用される。金融庁
検索すると今でも「積立NISAを40代から」といった表現は頻繁に使われるが、制度を確認するときは旧制度と現行制度を混同しないことだ。
40代からNISAを始める最大の注意点は何か?
最大の注意点は、開始が遅かった焦りからリスクを取り過ぎることである。
20代から投資してきた人の資産額を見て、「自分は20年遅れた」「もっと大きく増える商品を選ばなければ」と考える人がいる。
ここは一刀両断しておきたい。
失った時間を、高いリスクで買い戻すことはできない。
40代は20代より投資期間が短い一方、教育費、住宅ローン、自宅修繕、親への支援など、まとまった現金支出が発生しやすい時期でもある。
だからこそ、40代が管理すべきなのは積立額・運用期間・必要額の3つだと私は考えている。
必要な資金を守ったうえで、毎月いくらなら長期間続けられるのか。
65歳ですべて売る必要がなければ、70歳まで運用期間を延ばせないか。
老後に本当に必要なのはいくらなのか。
この3つを調整する。
時間が短いからといって、期待リターンだけを無理に引き上げてはいけない。
ここには40代ならではの強みもある。
20代より残された投資期間は短い。しかし40代になると、収入、住宅ローン残高、子どもの教育費、現在の金融資産、退職時期など、人生の数字が具体化してくる人も多い。
つまり、若さでは負けても設計精度では勝負できる。
商品ランキングを眺め続ける前に、自分の数字を出したほうがいい。
それこそが、40代からNISAを始める価値だと私は考える。
私見|40代のNISAは「一発逆転」ではなく残り時間の管理である
筆者としては、「40代からNISAでは遅いですか?」という問いに対して、安易に「全然遅くありません」とだけ答える気にはなれない。
20代から始めた人より遅い。
これは事実だ。
だが、20年前に始めなかったことと、今日始めないことには何の因果関係もない。
45歳で「もう遅い」と5年間迷えば50歳になる。
50歳で再び「今さら遅い」と迷えば55歳になる。
怖いのは開始年齢そのものではない。判断を先送りし続けて、使えたはずの時間を自分で削ることである。
一方、「今すぐ全財産をNISAへ入れればいい」という話でもない。
40代だからこそ一発逆転を捨てるべきだ。
最初は月2万円でも3万円でもいい。家計に余裕が生まれたら増額する。住宅ローンや教育費負担が終わったら、その一部を積立へ回す。
最初の積立額を一生固定する必要などない。
品質管理でも、一度決めた条件を永久に放置することはない。計測し、結果を確認し、条件が変われば改善する。
資産形成も同じである。
年に一度、積立額、現在の金融資産、残りの運用期間、目標額との差を確認する。
それだけでも「何となく不安だから投資している」という状態から抜け出せる。
金融庁が2026年7月3日に公表した2025年12月末時点の調査では、40歳代のNISA口座は538万1,768口座、全体の約19.1%だった。金融庁
この数字が示しているのは「40代なら必ずNISAをやるべき」ということではない。
少なくとも、40代という年齢だけを理由に「利用する意味がない」と判断する根拠にはならない、ということである。
まとめ|40代からNISAを始めても遅すぎるとは言えない
40代からNISAを始めるのは、20代から始めるより遅い。それでも45歳から65歳まで20年あり、現在のNISAは非課税保有期間も無期限である。金融庁
毎月3万円を20年間積み立てれば元本だけで720万円、5万円なら1,200万円になる。運用成果は保証されないが、20年という時間を「もう意味がない」と捨てる理由もない。
大切なのは、年間360万円の枠を無理に埋めることではない。
近い将来使うお金を分け、生活防衛資金を確保し、運用期間と必要額を決め、継続できる積立額で始める。
そして家計が変われば金額を見直す。
40代のNISAで本当に避けたいのは、開始が遅かったことではない。「遅い」と悩み続け、残されている時間まで失うことである。
過去の20年は変えられない。
だが、これからの20年をどう使うかは今日から変えられる。
よくある質問
40代からNISAを始めても本当に遅くありませんか?
一律に「遅すぎる」とは言えない。40代なら65歳まででも約16〜25年あり、2024年からのNISAは非課税保有期間も無期限である。開始年齢だけではなく、実際に何年間運用できるかで判断すべきだ。
40代からNISAを始めるなら月いくらが適切ですか?
全員共通の適正額はない。教育費、住宅費、生活防衛資金などを確保したうえで、長期間使わない資金から値下がり時にも継続できる金額を決めることが重要である。
40代ならNISAの年間360万円を急いで使うべきですか?
その必要はない。年間360万円は、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円を合わせた制度上の上限であり、投資目標額ではない。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

