40代・貯金なしでも家を買える可能性はある。だが、住宅ローン審査に通ることと、購入後も家計を壊さず返し続けられることは別問題である。
住宅金融支援機構が2026年7月24日に公表した「2025年度【フラット35】利用者調査」では、利用者の平均年齢は43.3歳だった。ただし、この数字は「40代・貯金なしの人が普通に借りられている」ことを示す統計ではない。40代で家を買うなら、年齢だけで安心せず、必要資金・完済年齢・購入後に残る現金まで確認する必要がある。 ジャパンヘルスファウンデーション
40代・貯金なしでも家は買える?フラット35の最新データではどうなっている?
結論から言えば、40代という年齢だけで住宅購入を諦める必要はない。
住宅金融支援機構の「2025年度【フラット35】利用者調査」は、2025年4月から2026年3月までの買取承認案件・付保承認案件のうち、借換えを除く3万5,553件を集計したものだ。2026年7月24日に公表され、利用者の平均年齢は43.3歳となっている。 ジャパンヘルスファウンデーション
同調査では、30歳未満の利用割合が12.1%、30代が33.0%であり、30代以下の合計は45.1%だった。平均年齢は前年度より1.2歳低下している。 ジャパンヘルスファウンデーション
一方、詳細集計では40代の利用割合も25.6%となっている。
つまり、【フラット35】利用者に限って見れば、40代で住宅ローンを利用すること自体は特別なケースではない。
ただし、ここで絶対に読み違えてはいけない。
「利用者の25.6%が40代」という数字は、「40代で貯金0円の人が25.6%いる」という意味ではない。
この調査は【フラット35】利用者の年齢や世帯年収、住宅価格、資金調達状況などを集計したものであり、「預貯金が完全に0円だった40代が何人住宅ローンを組めたか」を示す統計ではない。 ジャパンヘルスファウンデーション+1
ここを混同すると判断を誤る。
40代で家を買うことが珍しくない。
これは事実である。
しかし、貯金がない状態のまま家計に余力がなくても問題ない。
そこまでは言えない。
私は品質管理の現場で、設備や工程を見るときに「正常時に動くか」だけでは判断しない。
見るべきなのは、トラブルが起きたときにどこまで耐えられるかである。
住宅購入も同じだ。
毎月普通に働けているときに返せるかではなく、収入減、教育費、修繕、車の買い替えなどが重なっても耐えられるか。
貯金なしで住宅を買うなら、審査以上にこの「家計の耐久性」を見なければならない。
40代の住宅ローン審査では何を見られる?
40代の住宅ローン審査では、年収だけではなく、完済時年齢、健康状態、借入時年齢、勤続年数、返済負担率、他の債務などが幅広く確認される。
国土交通省の「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」では、融資時の審査項目として「完済時年齢」を挙げた金融機関は98.4%だった。
ほかにも、健康状態96.1%、借入時年齢96.2%、年収94.2%、勤続年数93.9%、担保評価91.0%、返済負担率90.9%と、多くの金融機関が複数の条件を確認している。 国土交通省
さらに「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」を考慮する金融機関も72.5%だった。 国土交通省
要点を整理すると、40代では次の項目を一体で考える必要がある。
- 何歳で住宅ローンを借りるのか
- 何歳で完済するのか
- 年収に対して返済額が重すぎないか
- 自動車ローンやカードローンなど他の借入がないか
- 勤続年数や雇用状況に問題がないか
- 健康状態を含め、利用する住宅ローンの商品条件を満たせるか
特に重要なのが完済時年齢だ。
国土交通省の同調査では、完済時年齢を審査項目とする金融機関が98.4%に達している。さらに具体的な基準として「80歳未満」と回答した金融機関が多数を占めている。 国土交通省
例えば45歳で35年ローンを組めば、単純計算では完済は80歳になる。
返済期間を長くすれば月々の返済額は抑えやすい。
しかし、その代わりに住宅ローンが老後まで残りやすくなる。
反対に期間を短くすれば完済年齢は早くなるが、毎月返済額は増える。
ここが40代住宅購入の難しいところだ。
「35年借りられるか」ではなく、「65歳時点でいくら残っているか」まで見る。
この視点を持つだけで、住宅ローンの見え方は変わる。
40代・貯金なしなら、住宅購入に必要な資金をどう考える?
「貯金なしでも頭金0円なら家を買えるのではないか」。
検索している人が最も知りたいのは、おそらくここだろう。
結論は単純ではない。
頭金0円と、現金0円で住宅購入できることは同じではない。
住宅購入に必要な資金は、少なくとも次の3つに分けて考えるべきである。
資金 役割 考え方
購入時に支払う現金 契約・登記・融資・保険・引越しなど 物件価格とは別に確認
頭金 住宅価格の一部を現金で支払う 0円の商品もあるが家計全体で判断
購入後に残す現金 突発支出や収入減への備え 使い切らないことが重要
住宅金融支援機構の2025年度調査では、【フラット35】利用者の平均所要資金は融資区分によって大きく異なる。
注文住宅4,262万円、土地付注文住宅5,313万円、建売住宅4,215万円、マンション5,882万円、中古戸建2,783万円、中古マンション3,602万円だった。いずれも前年度を上回っている。 ジャパンヘルスファウンデーション
ここで注目したいのは、中古住宅の存在である。
2025年度は、中古戸建と中古マンションを合わせた利用割合が35.9%となり、2004年度の調査開始以来初めて、融資区分の中で中古住宅が最多となった。 ジャパンヘルスファウンデーション
これは40代・貯金なしの住宅購入を考えるうえで重要なヒントになる。
貯金が少ないのに、新築4,000万円台、5,000万円台の物件だけを前提に資金計画を作る必要はない。
購入価格そのものを下げることも、立派な資金対策である。
なお、同調査の詳細集計では、利用者全体の平均所要資金は約4,203万円、平均手持金は約551万円となっている。
ただし、この551万円を「住宅購入に必ず必要な現金」と読んではいけない。
これはあくまで利用者全体の平均値である。
住宅の種類、購入地域、借入額、自己資金の入れ方によって実態は大きく変わる。
そして重要なのは、平均551万円という数字よりも、自分が購入直後にいくら現金を残せるかである。
例えば預金が300万円あるからといって、300万円をすべて頭金に入れるのが正解とは限らない。
頭金を入れれば借入額は減る。
しかし購入直後に給湯器、エアコン、車などの大型支出が発生したとき、口座残高がほとんどなければ別の借入が必要になる可能性もある。
住宅ローンを100万円減らした代わりに、生活防衛資金を100万円失う。
それでは必ずしも安全性が高まったとは言えない。
だから私は、頭金を考える前にこう問い直したい。
「いくら入れるか」ではなく、「払った後にいくら残るのか」。
この順番が重要である。
なお、住宅購入では登記、住宅ローン関連費用、火災保険、引越し、家具・家電など、住宅価格とは別に支出が発生し得る。
費用体系は新築・中古、戸建て・マンション、金融機関、仲介の有無などによって異なるため、「諸費用は一律○%」と決めつけて資金計画を作るべきではない。
見積書を取得し、物件代金以外に現金払いが必要な項目を契約前に一つずつ確認するのが確実である。
45歳・3,000万円を35年で借りると65歳時点でどうなる?
ここで一つ、具体例を置いてみよう。
例えば45歳の人が3,000万円を35年間、仮に年2.0%・元利均等返済・ボーナス返済なしで借りるとする。
これは特定商品の金利を示すものではなく、あくまで「完済年齢を見るため」の試算例である。
この条件では、毎月返済額は概算で約9万9,000円になる。
一見すると、「月10万円弱なら払える」と感じる人もいるだろう。
しかし45歳から20年後、65歳時点でも、概算で約1,540万円の元金が残る。
そして完済年齢は80歳である。
ここが40代住宅ローンで見るべき核心だ。
月9万9,000円という数字だけを見れば、それほど大きく感じないかもしれない。
だが65歳になったときも約1,500万円残っていると分かれば、印象は変わるはずだ。
定年後や再雇用後も同程度の返済を続けられるのか。
老後資金の積立と両立できるのか。
教育費が残っていないか。
家の修繕費が増える時期と重ならないか。
住宅ローンは月額だけで見ると、長期負債の重さを見誤りやすい。
40代は「月々払えるか」より「65歳で残債はいくらか」を必ず見るべきである。
もちろん金利、返済方式、繰上返済などで結果は変わる。
だからこそ、住宅ローンシミュレーションでは月額返済だけで満足せず、60歳・65歳時点の残高まで出して比較してほしい。
これは住宅価格を500万円下げた場合の効果を考える際にも役立つ。
3,500万円の物件しか見ていなかった人が3,000万円まで価格帯を下げれば、借入元金そのものが500万円減る。
立地、築年数、面積、新築へのこだわりを少し緩めるだけで、老後の負債を大きく圧縮できる可能性がある。
40代に残された労働期間は、20代より短い。
だからこそ「欲しい家から借入額を決める」のではない。
人生後半まで耐えられる借入額から、買える家を決める。
順番を逆にしてはいけない。
貯金なしでフルローンを使うなら、何を確認すべき?
フルローンそのものを一律に危険だと断定することはできない。
国土交通省の令和7年度調査を見ると、「購入の場合の融資可能額(融資率)」を審査項目としている金融機関は69.1%で、具体的な融資率として100%以内と回答した金融機関もある。 国土交通省
つまり、住宅価格の全額相当を融資対象にできる金融機関・商品が存在すること自体は事実である。
しかし、借りられることと、借りるべきことは違う。
私は貯金がほとんどない状態で住宅を検討するなら、最低でも次の5項目を契約前に確認すべきだと考える。
- 現在の毎月の手取り額と、実際に残っている黒字額
- 自動車ローン、カードローンなど住宅ローン以外の返済
- 購入時に現金で支払う総額
- 購入後に口座へ残る現金
- 60歳・65歳時点の住宅ローン残高
第一に見るべきなのは、なぜ今まで貯金ができなかったのかである。
ここを避けて住宅購入へ進んではいけない。
一時的に教育費や車購入など大型支出が重なり、現在だけ貯金が少ないのか。
それとも数年間、毎月の収入をほぼ使い切ってきたのか。
この2つでは意味が違う。
品質管理では、不良品だけ取り除いても再発防止にはならない。
原因を特定して工程を直さなければ、また同じ不良が出る。
家計も同じである。
貯金0円という結果だけを住宅ローンで覆い隠しても、毎月お金が残らない構造を変えなければ、購入後も現金は増えない。
むしろ固定資産税、管理費、修繕積立金、修繕費などの住宅関連支出が加われば、さらに家計が苦しくなる可能性がある。
だからこそ、住宅ローン審査を受ける前に、直近6か月から1年程度の家計を確認してほしい。
毎月5万円残っているつもりでも、年単位で見ると自動車税、保険、旅行、家電、冠婚葬祭などで消えていることは珍しくない。
「月間黒字」ではなく「年間で本当に残った金額」を見る。
これが現実の家計耐久性である。
40代・貯金なしで最も重視すべきなのは「購入後の現金」と「完済年齢」
ここからは筆者としての考えである。
私は、40代で貯金がないから住宅購入を諦めるべきだとは考えていない。
住宅金融支援機構の2025年度調査では【フラット35】利用者の平均年齢は43.3歳であり、40代の利用者も一定割合存在する。 ジャパンヘルスファウンデーション+1
さらに2025年度は中古住宅の利用割合が35.9%となり、調査開始以来初めて融資区分の中で最多になった。住宅価格を抑えるという選択肢も、以前にも増して現実的な検討対象になっていると私は考える。 ジャパンヘルスファウンデーション
だが、貯金がない状態で「住宅ローン審査に通ったから4,000万円まで買える」と考えるのは危険だ。
国土交通省の調査で金融機関が見ているのは、完済時年齢、健康状態、年収、勤続年数、返済負担率、担保評価、他の債務などである。 国土交通省
しかし銀行は、あなたの人生すべてを審査してくれるわけではない。
子どもを大学まで進学させたいのか。
親の介護費用が必要になる可能性はないか。
車を何年ごとに買い替えるのか。
60歳以降の収入はいくらになるのか。
老後資金をどこまで準備したいのか。
10年、20年後に住宅修繕費が重なったらどうするのか。
これらは各家庭で違う。
だから「審査に通る金額」は、家計にとっての安全な上限ではない。
私が40代住宅購入で最も重要だと考える基準は、次の二つである。
購入後も現金が残ること。
そして、
65歳時点のローン残高を受け入れられること。
この二つを満たさないなら、まず物件価格を下げる選択肢を検討したい。
4,000万円借りられるから4,000万円の家を買う必要はない。
3,500万円に下げたらどうなるか。
3,000万円ならどうか。
中古戸建ならどうか。
中古マンションならどうか。
駅から10分遠くしたらどうか。
床面積を少し小さくしたらどうか。
家を選ぶ条件は多い。
だが、人生の選択肢を奪うほど住宅費を膨らませる必要はない。
住宅ローンを払うために老後資金の積立を止める。
教育費が怖くて子どもの進路選択を狭める。
車が壊れるたびにカードローンを使う。
転職したくてもローンが怖くて動けない。
それでは家を手に入れた代わりに、人生の自由を失っている。
私はそれを良い住宅購入とは考えない。
住宅価格を下げることは敗北ではない。
家計に余白を残すことこそ、40代の住宅購入では合理的な戦略である。
まとめ
40代・貯金なしでも、住宅ローンを利用して家を買える可能性はある。
住宅金融支援機構が2026年7月24日に公表した「2025年度【フラット35】利用者調査」では、調査対象は借換えを除く3万5,553件、利用者の平均年齢は43.3歳だった。40代で住宅ローンを利用すること自体は特別ではない。 ジャパンヘルスファウンデーション
ただし、この統計は「40代・貯金0円でも問題なく借りられる」ことを示すものではない。
国土交通省の令和7年度調査では、完済時年齢98.4%、借入時年齢96.2%、健康状態96.1%、年収94.2%、勤続年数93.9%、返済負担率90.9%の金融機関が審査項目としている。 国土交通省
そして40代では、審査に通るか以上に完済年齢と購入後の手元資金が重要になる。
頭金だけを考えてはいけない。
購入時に支払う現金、頭金、購入後に残す現金を分ける。
月々の住宅ローン返済額だけではなく、60歳・65歳時点の残債を見る。
現在貯金がないなら、その原因が一時的な支出なのか、毎月使い切る家計構造なのかを確認する。
そのうえで、無理なら物件価格を下げる。
「借りられる最高額」ではなく、「買った後も人生に余白が残る価格」で家を選ぶ。
40代の住宅購入では、この基準を崩してはいけない。
よくある質問
40代で貯金0円でも住宅ローン審査に通る可能性はありますか?
可能性はある。
国土交通省の調査では、住宅ローン審査は貯金額だけで決まるものではなく、完済時年齢、健康状態、借入時年齢、年収、勤続年数、返済負担率、他の債務など複数項目が考慮されている。 国土交通省
ただし、審査に通ることと、購入後も無理なく返済できることは別である。
40代なら35年ローンは避けるべきですか?
35年ローンそのものが悪いわけではない。
問題は完済年齢と老後時点の残債である。例えば45歳から35年なら完済は80歳になるため、月々の返済額だけでなく60歳・65歳時点の残高も確認すべきだ。
返済期間を長くするなら、その分だけ老後まで負債が残る可能性を理解して利用する必要がある。
貯金なしなら、頭金を貯めるまで住宅購入を待つべきですか?
一律に「頭金○万円まで待つべき」とは言えない。
頭金を増やして住宅ローンを減らしても、購入後の預金がほぼ0円になれば、突発的な支出への耐久力は落ちる。
購入時に必要な現金、頭金、購入後に残す予備資金を分け、自分の家計に余白が残る価格帯を決めることが先である。
本多鋭一(ほんだえいいち)
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

