40代から投資を始めても遅くはない。重要なのは年齢ではなく、使う時期で資金を分け、長期運用できる余剰資金だけを投資へ回すことである。
2026年8月5日、トーシンパートナーズは40代からの投資をテーマにした解説記事を公開した。そこで示された考え方を整理しつつ、金融庁、J-FLEC、三菱UFJ銀行、厚生労働省などの資料も踏まえ、40代が投資を始める際に本当に優先すべきことを掘り下げる。
トーシンパートナーズは40代からの投資をどう解説した?
元記事の中心的なメッセージは、「40代からでも老後を見据えた投資を始めることは可能」というものだ。
トーシンパートナーズが2026年8月5日に公開した解説では、40代から投資を始める場合の考え方や選択肢が紹介された。
内容を大きく整理すると、ポイントは次の3つである。
- 40代から投資を始めても遅すぎるとは限らない
- 長期・積立・分散を意識して資産形成する
- 投資信託、NISA、iDeCo、株式投資、不動産投資などを選択肢として検討する
「40代だから投資には遅い」と決めつけるのではなく、残された時間と家計状況を踏まえて資産形成を始めるという方向性には、私も賛成である。
ただし、ここには一つ重要な補足が必要だ。
40代では「何に投資するか」より先に、「そのお金をいつ使うのか」を決めなければならない。
投資信託、不動産、個別株、NISA、iDeCoを比較する前に、生活防衛資金や教育費まで投資へ回していないかを確認する必要がある。
40代の資産形成は、商品選びの競争ではない。
家計全体を壊さず、老後まで運用を続けられる仕組みを作る作業なのである。
40代から投資を始めるのは本当に遅い?
遅いとは言い切れない。ただし、20代と同じ感覚で投資を始めてはいけない。
40歳から65歳までは25年ある。45歳から65歳でも20年だ。
20代から始めた人より複利を利用できる時間が短いのは事実である。しかし、20年前後の運用期間まで「もう時間がない」と切り捨てるのは極端だ。
野村アセットマネジメントの「インフレ到来とともに考える『老後資金2,000万円問題』」では、年率5%で運用すると仮定した積立シミュレーションとして、20年間で2000万円を目指す場合の必要積立額を月5万円としている。なお、税金や手数料などは考慮されておらず、将来の運用成果を保証する試算ではない。野村アセットマネジメント
つまり重要なのは、「40代ではもう間に合わない」ではない。
運用できる20年をさらに15年、10年へと減らさないことである。
一方で、焦って高いリターンを狙えばいいわけでもない。
40代から始めると「もっと早く投資していれば」という後悔が出やすい。しかし過ぎた時間は、リスクを上げても戻ってこない。
ここを勘違いしてはいけない。
厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表」では、日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.13年である。65歳で老後資金を全額使うわけではなく、その後も長期間にわたって資産を管理し、取り崩していく可能性がある。厚生労働省+1
したがって40代の資産形成では、
積み立てる期間だけではなく、老後にどう取り崩すかまで視野に入れる
必要がある。
40代から投資を始める人は珍しい?
三菱UFJ銀行が掲載する「アンケートで聞きました!あなたが資産運用を始めたきっかけは?」では、2022年2月に、20~60代の男女で「預貯金以外の資産運用を行ったことがある人」400人を対象としてインターネット調査を実施している。
資産運用を始めた年代では20代が35.3%で最も多く、トーシンパートナーズの記事では同調査をもとに40代から始めた人も一定数いることを紹介している。MUFGバンキング
ここで数字を雑に扱ってはいけない。
この調査は日本人全体を無作為抽出したものではなく、すでに預貯金以外の資産運用経験がある400人を対象にした調査である。
したがって「日本人の何%が40代から投資を始めている」と一般化することはできない。
一方で、「資産運用を始めた目的」では「老後の生活資金にそなえるため」が46.3%だった。
なお、同じ三菱UFJ銀行の別ページでは「資産運用を始めたきっかけ」の最多回答として老後資金32.8%という数字も掲載されている。「目的」と「きっかけ」は設問が違うため、46.3%と32.8%を混同しないことが重要である。 MUFGバンキング+1
40代で老後を意識して投資を始めること自体は、不自然ではない。
問題は開始年齢ではない。
始める順番である。
40代の投資は何から始める?最初にやるべき4ステップ
40代の投資初心者が最初に探すべきものは、人気銘柄でも高配当株でもない。「いつ使うお金なのか」を整理することだ。
私は次の順序で考えるべきだと思っている。
1. 生活防衛資金を確保する
2. 数年以内に使う予定資金を分ける
3. 残った長期資金から投資可能額を決める
4. 最後にNISA・iDeCoと投資商品を選ぶ
40代の家計には、異なる「使用期限」を持ったお金が同居している。
毎月の生活費。
失業や病気などへの備え。
高校・大学などの教育費。
住宅修繕費。
車の買い替え。
そして老後資金だ。
これらを「金融資産1000万円」という一つの数字でまとめてしまうから、投資可能額を見誤る。
例えば金融資産が1000万円ある家庭を考えてみよう。
3年以内の教育費として300万円、住宅関連費として150万円、生活防衛資金として250万円を確保するなら、単純計算で残る300万円が長期投資を検討できる資金の候補になる。
逆に同じ1000万円を持っていても、独身で近い将来の大型支出が少なく、安定した収入があり、十分な生活防衛資金を別途確保できている人なら状況は異なる。
したがって投資可能額の基本式は、
金融資産 − 生活防衛資金 − 近い将来の予定支出 = 長期投資を検討できる資金
と考えると分かりやすい。
もちろん実際には住宅ローン、保険、収入の安定性、退職予定、家族構成なども加味する必要がある。
だが少なくとも、「40代だから金融資産の70%を投資」という乱暴な決め方よりはるかに合理的だ。
40代の平均資産額を投資目標にしてはいけない
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」は、二人以上世帯5000世帯、単身世帯2500世帯を対象に、2025年6月20日から7月2日までインターネットモニター方式で実施された。
J-FLECでは2021年以降、調査方法を統一した単身世帯と二人以上世帯を合算する形で「参考・総世帯」の計表も作成している。2026年1月21日には同調査の修正についても公表されているため、データ利用時には最新版の確認が必要である。J-Flec
その2025年参考総世帯データでは、金融資産非保有世帯を含む40代の金融資産保有額は平均1339万円、中央値361万円である。
平均と中央値には約1000万円の開きがある。
これこそ、平均額だけを追ってはいけない理由だ。
「40代平均が1339万円だから、自分の500万円は少なすぎる」
そう焦ってリスクを上げる必要はない。
平均値は一部の大きな資産額に引っ張られやすい。一方、中央値は資産額順に並べたとき中央に位置する値である。
しかも教育費、住宅ローン、世帯人数、収入、退職金見込みまで家庭ごとに違う。
他人の残高は、あなたの投資可能額を決めてくれない。

現金は「増えない無駄な資産」なのか?
違う。
40代では、現金は投資を継続するための家計の安全在庫として機能する。
私は品質管理の仕事で、安全在庫を削りすぎた工程がどれほど外部環境の変化に弱くなるかを日常的に考えている。
家計にも同じ構造がある。
例えば投資資産が下落したタイミングで大学進学費用や住宅修繕費が必要になったとしても、十分な現金があれば投資商品を慌てて売却せずに済む。
逆に生活費まで市場へ投入していれば、価格が戻るまで待つという選択肢を失う。
暴落そのものより、暴落時に売却せざるを得ない家計構造の方が危険なのである。
この視点は、40代の資産形成では極めて重要だ。
40代ではNISAとiDeCoをどう使い分ける?
NISAとiDeCoは「どちらがお得か」ではなく、その資金をいつ使うのかで使い分けるべきだ。
まずNISAを確認しよう。
金融庁「NISAを知る」によれば、2024年からのNISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる。
年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で、合計最大360万円。非課税保有限度額は合計1800万円で、そのうち成長投資枠は1200万円までとなっている。非課税保有期間は無期限である。金融庁
ここで必ず覚えておきたい。
年間360万円は目標額ではない。制度上利用できる上限額だ。
「NISAは満額使わなければ損だ」と考え、生活防衛資金や数年後の教育費を投資へ回すなら順序が逆である。
さらにNISAでは、商品を売却すると、その商品の簿価、つまり取得額に相当する非課税保有限度額を翌年以降に再利用できる。金融庁
この換金の柔軟性は、40代にとって使いやすい特徴だ。
ただし「売れる」ことと「いつでも安心して使える」ことは別問題である。
必要な日に株価が30%下落している可能性はある。
だから5年後、10年後に絶対必要になる教育費まで、「NISAならいつでも売れるから」と株式型の商品へ入れてよいわけではない。
見るべきなのは投資期間だけではない。
その支出時期を延期できるかどうかまで考えるべきである。
一方のiDeCoは、老後の資産形成を目的とした個人型確定拠出年金だ。
iDeCo公式サイトでは、掛金の全額所得控除、制度内での運用益の非課税、受取時の控除という税制上の特徴が示されている。iDeCo公式サイト+1
その代わり、老後資産形成を目的とする制度であるため、原則として60歳まで年金資産を引き出せない。 加入期間などによって受給可能年齢が決まる点にも注意が必要だ。iDeCo公式サイト+1
つまり、
老後まで使わないと決められる資金ほどiDeCoと相性がよく、途中で使う可能性がある長期資金ではNISAの方が柔軟性を持たせやすい
と整理できる。
ただし個々の税負担、勤務先の企業年金制度、利用できる掛金上限などによって条件は変わる。
制度から投資額を決めてはいけない。
資金の目的を決めてから制度を選ぶ。
これが順序である。
40代の投資初心者は何を買えばいい?
老後資産形成を主目的とする初心者なら、まず低コストで広く分散できる投資信託を軸に検討する方法が現実的である。
元となったトーシンパートナーズの記事では、投資信託、NISA、iDeCo、不動産投資、株式投資などが40代の選択肢として紹介された。
ただし、この並びには整理して理解したい点がある。
NISAとiDeCoは投資商品そのものではない。
税制上の優遇を受けながら資産形成するための制度・口座の枠組みである。
NISAという商品を買うのではなく、NISA口座の中で投資信託や株式などを購入する。
iDeCoでも、用意された投資信託や定期預金などの運用商品から選択する。iDeCo公式サイト
初心者なら商品の派手なリターンだけを見るな。
確認したいのは、
- 何へ投資する商品なのか
- 国・地域・企業がどの程度分散されているか
- 信託報酬などの保有コストはいくらか
- どの程度の値下がりがあり得るか
という基本事項である。
三菱UFJ銀行の2022年調査では、資産運用経験者400人が最初に購入した商品として、国内株式や投資信託が多かったことも紹介されている。
しかしこれは、「初心者は国内株式を買えばよい」という意味ではない。
アンケートで多かったことと、自分に適した商品であることは別問題だ。
個別株なら企業固有のリスクがある。
業績悪化、不祥事、競争力の低下などが一社に直撃すれば、その企業へ集中しているほど資産への影響も大きくなる。
不動産投資にも空室、家賃下落、修繕、災害、物件価格下落、借入金利など固有のリスクがある。
特に住宅ローンを抱えている40代では、不動産投資の借入だけを単独で考えるのではなく、家計全体でどれだけ負債を抱えるのかを見る必要がある。
40代初心者が避けたいのは、一発逆転を狙って資産を一つの投資先へ集中させることである。
長期・積立・分散も利益を保証する魔法ではない。
長期保有でも損失はあり得る。
積立投資が一括投資より常に高いリターンになるわけでもない。
広く分散していても、世界的な市場下落では複数の資産が同時に値下がりすることがある。
それでも分散する意味はある。
未来を完璧に当てることへ依存せず、一つの判断ミスで致命傷を負うリスクを抑えるためだ。

40代から投資するとき最大の失敗は何?
ここからは私見である。
40代の最大の失敗は、投資開始が遅かったことではなく、「遅れを取り戻そう」として無理なリスクを取ることである。
20代から投資していれば、より長い運用期間を確保できた。
それは事実だ。
しかし40代でリスクを2倍にしても、失った20年間が戻ってくるわけではない。
例えば500万円を値動きの大きい資産へ投資し、その後30%下落すれば評価額は350万円になる。
30%という数字はあくまで説明用の仮定だが、そのとき150万円の教育費が必要ならどうなるか。
十分な現金がなければ、値下がりした投資資産を売却せざるを得ない可能性がある。
だから私は、「暴落に耐えられる商品」を探すより先に、暴落しても売らずに生活できる家計を作るべきだと考えている。
ここで先ほどの「家計の安全在庫」が生きる。
投資を続けるためには、投資しないお金も必要なのである。
「40代なら月5万円」が正解ではない
野村アセットマネジメントの20年間・年率5%・目標2000万円というシミュレーションでは、必要積立額は月5万円とされている。野村アセットマネジメント
だがこれは条件を置いた計算例だ。
全40代に「月5万円投資せよ」と指示する数字ではない。
月5万円を投資した結果、固定資産税や学費をボーナス頼みにするなら無理がある。
月2万円でも十分な現金を確保し、20年間継続できる方が家計として強い場合もある。
投資額は、他人との競争で決めるものではない。
三菱UFJ銀行の2022年調査では、資産運用を経験して予想外だったこととして、35.3%が「相場が過剰に気になるようになった」と回答している。MUFGバンキング
これは興味深い数字だ。
リスク許容度とは、アンケートで「私は積極型です」と答えれば決まるものではない。
100万円が90万円になる。
500万円が400万円になる。
そのとき仕事中まで価格が気になるのか。
夜中に売却したくなるのか。
そこで初めて、自分がどの程度の値動きに耐えられるのか見えてくる。
だから初心者は、最初から限界まで資金を入れる必要はない。
無理のない額から始め、実際の値動きに対する自分の反応を確認しながら積立額を調整する。
私はこのやり方の方が、40代には再現性が高いと考える。
40代には「資金計画の解像度」という強みがある
20代に比べれば、40代の残された運用期間は短い。
そこは認めなければならない。
しかし40代には、20代にはない材料もある。
住宅を購入するのか、すでに持っているのか。
子どもの進学時期はいつか。
毎月の生活費はいくらか。
何歳まで働きたいのか。
退職後にどの程度の生活を送りたいのか。
人生の条件が具体化している人は多い。
私はここが40代の強みだと考えている。
時間の長さでは若い世代に負けても、資金計画の解像度では勝負できる。
だからこそ、焦って高リスク商品へ走るのではなく、いつ使う資金なのかを一つずつ整理する。
これが40代から投資を始める人に必要な覚悟である。
まとめ:40代の投資は年齢より「お金の使用期限」で決める
40代から投資を始めても遅すぎるとは言えない。
2026年8月5日にトーシンパートナーズが公開した記事でも、40代から老後を見据えて投資を始めることは可能とされ、投資信託、NISA、iDeCo、株式、不動産などが選択肢として紹介された。
だが商品選びより先にやるべきことがある。
生活防衛資金、近い将来に使う予定資金、長期間使わない資金へ分けることだ。
そのうえで、
金融資産 − 生活防衛資金 − 近い将来の予定支出 = 長期投資を検討できる資金
と考える。
途中で使う可能性のある長期資金なら、換金できるNISAを選択肢として検討する。
老後まで使わないと決められる資金なら、原則60歳まで引き出せないiDeCoの特徴を理解したうえで検討する。
そして投資商品では、分散、コスト、リスクを確認する。
NISAの年間360万円はノルマではない。
40代の平均資産額も目標額ではない。
他人の積立額も、あなたの正解ではない。
40代からの投資で本当に捨てるべき言葉は、「もう遅い」と「急いで取り戻さなければ」である。
20年前には戻れない。
しかし、50代になった自分が「なぜ40代のときに始めなかったのか」と後悔する未来は変えられる。
派手な投資先を探す前に、今持っているお金へ使用期限を書き込め。
投資は、買うことからではない。使わないお金を決めることから始まるのである。
よくある質問
40代から投資を始めても本当に遅くありませんか?
遅いとは言い切れない。
40歳から65歳までは25年、45歳からでも20年ある。重要なのは、遅れを取り返そうと高いリスクを取るのではなく、生活資金を確保したうえで長期間使わない資金を早く運用へ回すことである。
40代の投資初心者はいくらから始めればいいですか?
年齢だけで決まる正解額はない。
生活防衛資金、教育費、住宅費など近い将来に必要な資金を先に確保し、その残額と毎月の家計収支から継続可能な金額を決めるべきである。
「40代だから月5万円」ではなく、市場が下落しても家計を崩さず続けられる金額がスタート額だ。
40代ではNISAとiDeCoのどちらを優先すべきですか?
そのお金を使う時期で判断する。
NISAは保有商品の売却が可能で、非課税保有限度額も売却した商品の簿価分を翌年以降に再利用できる。一方、iDeCoは老後資産形成を目的とする制度で、原則60歳まで年金資産を引き出せない。金融庁+1
したがって、単純に税制メリットだけを比べるのではなく、途中で使う可能性があるのか、老後まで使わない資金なのかを先に決めるべきである。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品、銘柄、不動産物件、投資手法の購入や契約を推奨するものではない。投資商品には価格変動や元本割れなどのリスクがあり、シミュレーション上の利回りは将来の運用成果を保証しない。
NISA、iDeCoを含む制度、税制、対象商品、拠出限度額などは変更される可能性がある。実際に利用する際は、金融庁、J-FLEC、国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」などの最新情報を確認してほしい。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

