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40代から感じる筋肉の衰え|変化が起こる原因と見直したい習慣

40代会社員が階段で脚の衰えを感じ、筋力・活動量・食生活を見直しているシーン 筋力対策

40代の筋肉低下は加齢だけでなく、座りすぎ・運動不足・栄養不足が重なって進みやすく、対策は筋トレ・日常活動・食事の3本柱である。

さらに2025年、アジアのサルコペニア基準「AWGS 2025」が大幅に改訂され、50~64歳の中年層にも独自の診断閾値が設定された。これは筋肉の問題を「高齢者になってから考えるもの」ではなく、「中年期から管理するもの」へ変える重要な動きだ。ウォルター・スポーツ+1

ただし、40~49歳にAWGS 2025の50~64歳基準をそのまま当てはめて自己診断してはいけない。40代で本当に見るべきなのは、体組成計の数字一つではなく、筋力・身体機能・活動量が自分の過去と比べてどう変化しているかである。

AWGS 2025で何が変わった?50代から始まる新しいサルコペニア基準

結論から言えば、AWGS 2025の重要な変更点は、50~64歳を対象とする基準を新設し、サルコペニアを「低筋肉量+低筋力」でより明確に捉える方向へ整理したことである。

AWGSとはAsian Working Group for Sarcopenia、つまり「アジアサルコペニアワーキンググループ」である。

アジア人の体格や研究データを踏まえ、サルコペニアの診断や評価について基準を示してきた専門家グループだ。

最初のAWGSコンセンサスは2014年に発表され、2019年には「possible sarcopenia(可能性のあるサルコペニア)」などを含む改訂が行われた。

そして今回のAWGS 2025では、2023年2月から専門家による検討が重ねられ、2025年1月にコンセンサスを最終化。論文は2025年9月30日に受理され、2025年11月4日に医学誌『Nature Aging』でオンライン公開された。

著者にはLiang-Kung Chen氏、Jean Woo氏、日本の国立長寿医療研究センターに所属する荒井秀典氏らが名を連ねている。ウォルター・スポーツ+1

今回の変更を整理すると、こうなる。

AWGS 2025の項目 50~64歳 65歳以上
握力・男性 34kg未満 28kg未満
握力・女性 20kg未満 18kg未満
DXA・ASMI 男性 7.2kg/m²未満 7.0kg/m²未満
DXA・ASMI 女性 5.5kg/m²未満 5.4kg/m²未満
BIA・ASMI 男性 7.6kg/m²未満 7.0kg/m²未満
BIA・ASMI 女性 5.7kg/m²未満 5.7kg/m²未満
5回椅子立ち上がり 10秒以上 12秒以上
6m歩行速度 1.2m/秒未満 1.0m/秒未満

ここで極めて重要な注意点がある。

AWGS 2025では、歩行速度や5回椅子立ち上がりテストなどの身体機能は重要な評価項目であるものの、サルコペニアそのものを確定する診断要件ではなく、アウトカム指標として整理された。

診断の中心は低筋肉量と低筋力の併存である。握力が34kgを下回っただけで、50代男性が即「サルコペニア」と診断されるわけではない。ウォルター・スポーツ+1

そして何より、34kg・20kgという数値は50~64歳向けであって、40~49歳用の診断基準ではない。

45歳の男性が握力33kgだったからといって、「AWGS基準を下回ったからサルコペニアだ」と判断するのは基準の誤用である。

健康情報で最も危険なのは、数字だけを切り取ることだ。

品質管理でも、規格値には必ず「何を、どの測定方法で、どの条件で、誰を対象に測定した数字なのか」という前提条件がある。

身体も同じである。

AWGS 2025が40代にも重要な理由

では、まだ対象外である40代にAWGS 2025は関係ないのか。

私はそうは考えない。

AWGS 2025は、従来の「サルコペニアという病態を見つける」という考え方から、生涯を通じたMuscle Health、つまり筋肉の健康を守る考え方を前面に出している。

論文では、骨格筋量は若年期にピークを迎えた後に徐々に低下し、50歳以降は低下が速まるという背景も示されている。さらに今回の検討過程では、筋力が筋肉量よりも死亡や機能低下の予測に重要だったとする解析も紹介されている一方、診断の特異性を確保するためには筋肉量と筋力の双方が必要だと整理された。ウォルター・スポーツ

ここは見逃してはいけない。

筋肉量の数字だけを追いかけている人ほど、重要な変化を見逃す可能性があるからだ。

「体組成計では筋肉量が変わっていないから大丈夫」

そう安心する前に、階段、歩行、立ち上がり、握力、筋トレで扱える重量を確認してほしい。

筋肉は、持っている量だけでなく、使えているかが重要なのである。


40代で筋肉が衰える原因は?加齢だけでは片づけられない

40代で「昔より脚が弱くなった」「疲れやすくなった」と感じても、その原因をすべて加齢で処理するのは雑すぎる。

もちろん加齢に伴い、筋肉やそれを動かす神経系、筋タンパク質の代謝などは変化する。

しかし40代のビジネスパーソンで無視できないのは、生活そのものから筋肉を使う場面が消えていることだ。

朝は車で駅へ。

駅ではエスカレーター。

会社に着けばエレベーター。

8時間以上パソコンの前に座り、昼食もデスク。

帰宅すればソファ。

仕事で疲れているから「今日も身体を使った」と感じる。

だが、ここは厳しく区別しなければならない。

仕事で疲れていることと、筋肉に十分な刺激が入っていることは同義ではない。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、成人は座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意し、「今より少しでも多く身体を動かす」ことが推奨されている。健康日本21アクション支援システム+1

体重を落とすことばかり考える食生活にも注意する

もう一つ、40代でありがちな落とし穴が食事だ。

腹囲が気になり始めると、朝食を抜く。

昼はサラダだけ。

炭水化物は徹底的に減らす。

夕食も極端に抑える。

体重計の数字は減るかもしれない。

しかし、必要なエネルギーやタンパク質まで不足させれば、筋肉を維持するための条件まで悪化させかねない。

「体重が減った=健康になった」という単純な式は成立しない。

体脂肪を減らしたいのか。

筋力を保ちたいのか。

健康診断の数値を改善したいのか。

目的を整理せず食事量だけを削るのは、製造現場で言えば「コスト削減のため原料をとにかく減らす」ようなものだ。

それでは品質まで落ちる。

さらにAWGS 2025は、筋肉の健康に影響する要素として、栄養、レジスタンス運動を含む構造化された運動、ホルモンバランス、慢性疾患、生活習慣など複数の要因を挙げている。ウォルター・スポーツ

つまり、原因を「年だから」の一言で終わらせるなということである。

変更できない年齢と、変更できる活動量・食生活・運動習慣を分離する。

品質トラブルなら原因解析をするのに、自分の身体だけは「老化」で処理する。

それでは管理とは呼べない。

※画像はAIによるイメージ

40代は何を測ればいい?体組成計より「変化の履歴」を見る

40代ではAWGS 2025の50~64歳基準を借りて自己診断するのではなく、自分自身の基準値を作り、数か月単位で変化を見ることを勧めたい。

確認しやすいのは次のような項目だ。

  • 同じ階段を上ったとき、以前より明らかに脚が重くなっていないか
  • 椅子や床から立つとき、手を使う場面が増えていないか
  • 歩く速度が落ち、家族や同僚についていきにくくなっていないか
  • 握力や筋トレの重量・回数が長期間低下し続けていないか
  • 意図しない体重減少や活動量の大幅な低下が起きていないか

この程度でもいい。

大切なのは、昨日と今日を比べて一喜一憂するのではなく、同じ条件で定期的に確認することである。

家庭用BIA体組成計も無意味ではない。

ただし、表示される「筋肉量」をAWGS 2025のDXAやBIAによるASMI基準へ直接当てはめてはいけない。

AWGSで使われるのは四肢骨格筋量を身長の二乗などで補正した指標であり、家庭用機器の表示項目や推定式とは同一とは限らない。

さらにBIAによる推定値は水分状態などの影響も受ける。

だから私は品質管理と同じ考え方を使う。

朝起床後など測定条件をできるだけ統一する。

毎日の小さな上下動ではなく、数週間から数か月の傾向を見る。

体重だけでなく、活動量や実際の筋力も合わせる。

単一の測定値ではなく、複数の指標を時系列で見る。

これだけで身体の見え方は大きく変わる。

「指輪っかテスト」で40代のサルコペニアを診断できる?

できない。

ふくらはぎを両手の親指と人差し指で囲む「指輪っかテスト(Yubi-wakka test)」は、AWGS 2025でケースファインディングの手法として追加されている。ウォルター・スポーツ

しかし、それは40代が自宅でサルコペニアを確定診断する検査ではない。

握力も同じである。

セルフチェックは「変化へ気づくための警報器」にはなるが、診断書にはならない。

この区別を曖昧にしてはいけない。

急な筋力低下まで「40代だから」で済ませない

一方、何でも生活習慣の問題にするのも危険である。

数日から短期間で急に力が落ちた、片側だけ明らかに力が入りにくい、意図しない体重減少が続いている、転倒が増えた、日常生活に支障が出るほど歩けない――こうした変化は「運動不足だからスクワットを増やそう」で済ませる話ではない。

突然の片側の脱力や言葉の出にくさ、強い胸痛、失神など急性の症状がある場合は、筋肉づくりの記事を読み続ける場面ではなく、速やかな医療相談が必要である。

異常が出たら、原因を確認する。

気合いで正常扱いしない。

これも健康管理の基本である。


40代の筋肉の衰え対策は?筋トレ・日常活動・栄養を同時に直す

40代の対策は、特別なサプリメント探しから始める必要はない。

優先順位は明確だ。

筋力トレーニング、日常の身体活動、必要なエネルギーと栄養の確保。

まず、この土台を作るべきである。

筋トレは週2~3日を一つの目安にする

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人と高齢者に筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨している。

ここでいう筋トレには、マシンを使ったウエイトトレーニングだけでなく、自分の体重を負荷にする腕立て伏せやスクワットなども含まれる。健康日本21アクション支援システム+1

「ジムに通う時間がないからできない」

その言い訳はここで終わりだ。

自宅で椅子から立つ。

スクワットをする。

机や壁を使って腕立て伏せをする。

十分に負荷を調整できる。

ただし「きつければきついほど効く」と考えるのも間違いだ。

運動習慣がなかった人が、突然若い頃の感覚で高重量トレーニングを始めれば故障につながる。

筋トレは根性試験ではない。

適切な負荷をかけ、回復し、少しずつ進める工程管理である。

腰や膝などに強い痛みがある人、持病がある人、医療機関から運動制限を受けている人は、自己判断で負荷を上げず専門家へ相談してほしい。

8,000歩は「今日から絶対達成するノルマ」ではない

厚生労働省の成人向けガイドでは、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、歩数ではおおむね1日8,000歩以上に相当する量が目安として示されている。筋トレ週2~3日と同時に、座位時間が長くなりすぎないことも推奨されている。健康日本21アクション支援システム

ただし、現在3,000歩の人が翌日から無理に8,000歩へ増やす必要はない。

厚労省のメッセージも「今より少しでも多く身体を動かす」が基本である。

40代会社員なら、昼休みに10分歩く。

駅では階段を使う。

長時間のデスクワークを時々中断する。

近距離なら歩く。

こうした変更でも身体活動は積み上がる。

ここで重要なのは、運動を「休日だけに行う特別行事」にしないことだ。

週末に1時間走っても、平日の生活から身体活動が完全に消えていれば改善余地は残る。

筋肉を使う行動を、生活の工程そのものに組み込むのである。

タンパク質は重要だが「多ければ多いほどいい」ではない

40代の筋肉対策でタンパク質は重要である。

だが、「とにかく高タンパク」「体重1kg当たり○gを全員取れ」という乱暴な情報には距離を置きたい。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、30~49歳のタンパク質推奨量は男性65g/日、女性50g/日で、目標量は総エネルギー摂取量の13~20%と設定されている。

50~64歳でも推奨量は男性65g、女性50gで、目標量は14~20%エネルギーである。厚生労働省+1

ただし、この数字は「筋肉を最大化するための処方量」ではない。

健康な日本人を主な対象として設定された食事摂取基準である。

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを使い、食事全体の中で必要な栄養を確保する。

その基本を飛ばしてはいけない。

朝はコーヒーだけ。

昼はサラダだけ。

夜は酒とつまみ。

そこへプロテインを1杯追加して「筋肉対策完了」。

私は食品の品質管理に携わる人間として、こうした一成分依存には賛成できない。

AWGS 2025でも、筋肉の健康に対する介入はレジスタンストレーニングと栄養を組み合わせる複合的な考え方が示され、タンパク質、必須アミノ酸、HMBなども栄養介入の研究対象として扱われている。だからといって、健康な40代全員が特定のサプリメントを飲むべきだという意味ではない。ウォルター・スポーツ

食事で足りているのか。

運動しているのか。

そもそも摂取エネルギーが極端に不足していないか。

順番を守るべきである。

慢性腎臓病などで食事指導を受けている人は、自己判断でタンパク質摂取を大幅に増やさず、医師や管理栄養士から受けている指示を優先してほしい。

※画像はAIによるイメージ

私見|40代の筋肉管理は「50歳になる前の基準値づくり」から始める

筆者として今回のAWGS 2025で最も重要だと思うのは、握力34kgという数字ではない。

50~64歳を筋肉の健康へ積極的に目を向ける年代として明確に扱ったことである。

これまでサルコペニアという言葉を聞けば、「70代、80代の話だろう」と考えた40代は少なくないはずだ。

だがAWGS 2025は、筋肉を健康寿命全体の中で考える方向へ舵を切った。

ならば50歳の誕生日まで何もしない理由はない。

私が40代に勧めたいのは、今の自分を基準値として記録しておくことである。

体重。

普段の歩数。

階段の感覚。

握力を測れる環境があれば握力。

筋トレをしているなら重量と回数。

毎年あるいは数か月単位で同じ条件を確認する。

これには大きな意味がある。

50歳になって34kgという基準値を見るだけでは、「もともと35kg程度だった人が33kgになった」のか、「45kgあった人が33kgまで急激に落ちた」のか分からない。

同じ33kgでも、その意味は違う。

集団の基準値と、自分自身の経時変化は別物なのである。

ここが、40代がAWGS 2025から学ぶべき最も実践的なポイントだと私は考える。

品質管理では、規格内か規格外かだけを見ない。

まだ規格内でも、測定値が一方向へ連続して動いていれば工程異常の兆候を疑う。

身体もまったく同じ発想でいい。

「まだ基準を下回っていない」ではなく、「自分の過去から悪化していないか」を見る。

これなら40代にも使える。

「測る→変える→再確認する」で十分である

完璧な筋トレメニュー探しを半年続ける必要はない。

まず現在地を測る。

次に、一つ生活を変える。

週2日の筋トレを予定表へ入れる。

昼休みに10分歩く。

座り続ける時間を短くする。

朝食や昼食にタンパク質源を加える。

そして数週間から数か月後に再確認する。

改善しているなら続ける。

続かないなら仕組みを変える。

これだけである。

健康情報は、読んだ瞬間に身体を変えてくれる魔法ではない。

知識は実行されて初めて意味を持つ。

「仕事が忙しい」

分かる。

40代は責任も増える。

家庭も仕事も簡単ではない。

だが10年後の筋力を守るための行動を、10年後にまとめて実行することはできない。

今日使わなかった筋肉。

今日削った食事。

今日8時間座り続けた生活。

一日では大差に見えない。

しかし工程は積み上がる。

だからこそ、40代は「衰え始めたから終わり」の年代ではない。

衰え方を自分で管理し始める年代である。


まとめ|40代の筋肉の衰えを「年齢だから」で終わらせない

40代で感じる筋肉の衰えは、加齢だけで決まるわけではない。

身体活動の減少、長い座位時間、筋力トレーニング不足、食事量や栄養状態、健康状態など複数の条件が重なっていく。

そして2025年11月4日に公表されたAWGS 2025では、50~64歳向けのサルコペニア基準が設定され、筋肉の健康を中年期から考える姿勢がより明確になった。ウォルター・スポーツ+1

ただし、50~64歳の握力34kg・20kgなどを40~49歳へそのまま適用して自己診断してはいけない。

40代が今やるべきなのは、診断名を探すことではない。

筋トレを週2~3日行う。日常の身体活動を増やす。座りっぱなしを減らす。必要なエネルギーとタンパク質を食事から確保する。そして自分の筋力や身体機能の変化を記録する。

派手な方法ではない。

だが本質はここにある。

10年後の身体は、突然その日に完成するものではない。

今日の生活工程の延長線上にある。

階段がきつくなったことに気づいたなら、それを老化の一言で処理するな。

気づいた今日が、工程を変える日である。


よくある質問

40代になると筋肉は毎年1%ずつ減るのですか?

「40代から全員が毎年必ず1%減る」と一律に考えるのは適切ではない。

筋肉量や筋力の変化は、年齢だけでなく性別、活動量、健康状態、測定方法などでも異なる。AWGS 2025も生涯にわたる筋肉の健康という視点を重視しており、40代では固定された減少率を恐れるより、自分自身の筋力・活動量・身体機能の変化を追うほうが実用的である。

AWGS 2025の握力34kgは40代男性にも使えますか?

40~49歳のサルコペニア診断値として使うことはできない。

男性34kg未満、女性20kg未満というAWGS 2025の握力基準は50~64歳向けである。また、その握力値だけでサルコペニアが確定するわけではなく、低筋肉量との組み合わせが診断の中心になる。ウォルター・スポーツ

40代の筋肉対策はウォーキングだけで十分ですか?

ウォーキングは身体活動量を確保するうえで重要だが、それだけですべてを代替するとは考えないほうがいい。

厚生労働省は成人について日常の身体活動を増やすことに加え、筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨している。歩く、座りっぱなしを減らす、筋肉へ抵抗をかける運動を行う。この組み合わせが現実的である。健康日本21アクション支援システム+1

本多鋭一

現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

筋力対策
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