東京在住40代だけの「貯金中央値」を全国と同条件で示す公的統計は確認できない。全国40代の参考値は、二人以上世帯の金融資産中央値500万円、単身世帯100万円である。
ただし、ここでいう500万円や100万円は預貯金だけではなく、株式や投資信託などを含む「金融資産」の中央値だ。東京は所得水準が高い一方、生活費や教育費などの負担も大きいため、「東京なら全国中央値より貯金が多いはず」と単純には判断できない。
東京在住40代の貯金中央値はいくら?
結論は明確である。
「東京都在住」「40代」「中央値」「全国と同じ金融資産の定義」という条件をすべて満たす公的な数値は、今回確認した資料からは特定できない。
一方、全国40代については、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年」を基にした年代別データから、次の水準が確認できる。
世帯区分 金融資産の平均 金融資産の中央値
40代・二人以上世帯 1,486万円 500万円
40代・単身世帯 859万円 100万円
二人以上世帯の2025年調査は全国5,000世帯を対象に、2025年6月20日から7月2日にインターネットで実施された。単身世帯についても別途調査されている。
検索ユーザーが最初に押さえるべき数字は、したがって二人以上世帯500万円、単身世帯100万円である。
ただし、これをそのまま「40代の銀行預金残高」と読んではいけない。
J-FLECでいう金融資産には預貯金だけでなく、株式や投資信託など一定の金融商品も含まれる。「貯金」という日常語と、統計上の「金融資産保有額」は同義ではないからだ。
ここを曖昧にすると、比較は最初から崩れる。
私は品質管理の現場で、測定条件が違う数字を横並びにすることを何より警戒している。
検査方法もサンプル条件も違う数値を並べ、「Aのほうが優秀だ」と評価しても意味がない。家計統計も同じである。
したがって現時点で、
「東京在住40代の貯金中央値は500万円より高い」
とも、
「東京在住40代の中央値は全国と同じ500万円程度だ」
とも断定できない。
数字がないなら、ないと書く。それが情報を扱う最低限の品質管理である。
東京都40代の資産統計はどこまで分かる?
東京の40代について何も分からないわけではない。
問題は、公的統計には東京都の所得・資産・負債に関するデータが存在するものの、「東京都×40代×金融資産×中央値」まで条件をそろえた数字を、そのまま全国40代の500万円と比較できないことである。
整理するとこうなる。
知りたい項目 確認状況 注意点
全国40代・二人以上世帯の金融資産中央値 500万円 J-FLEC 2025年
全国40代・単身世帯の金融資産中央値 100万円 J-FLEC 2025年
東京都の年間収入 公的統計あり 40代限定ではない
東京都の金融資産・預貯金・負債 公的統計あり 調査定義・世帯条件の確認が必要
東京都40代だけの同条件中央値 今回の確認では特定できず 全国500万円と直接比較できない
総務省の2019年全国家計構造調査では、家計の収入だけでなく、金融資産残高、預貯金、有価証券、金融負債、住宅・土地に関する負債などが都道府県別に把握されている。
同調査で総世帯の年間収入を見ると、東京都は629.7万円で47都道府県中もっとも高かった。
つまり、「東京都は所得水準が高い」という点には公的な裏付けがある。
しかし、この629.7万円は「東京在住40代だけの年収」ではない。
さらに、J-FLECの2025年調査と総務省の2019年全国家計構造調査では、調査年も対象も集計方法も異なる。
ここで東京都の所得データと全国40代の金融資産中央値を強引につなぎ、
「東京都は収入が高い。だから東京の40代は500万円以上持っているはずだ」
と結論づけるのは統計の読み方として乱暴である。
分かっているのは「東京は高所得地域である」ということ。分かっていないのは「東京40代の金融資産中央値が全国40代より何万円高いのか」ということである。
この境界線を明確にしておくことが重要だ。
東京の40代は全国より貯金が多いのか?
東京都の所得水準は全国でも高い。しかし、それだけでは東京在住40代の貯金・金融資産が全国より多いとは証明できない。
なぜなら、資産形成を決めるのは収入だけではないからである。
年収が高くても、住居費、教育費、日常生活費が増えれば、資産へ回せる余力は小さくなる。
東京都の40代家計を扱ったMONEY PLUSの2024年11月26日掲載記事では、東京都の「都民のくらしむき」などを基に、40代前半夫婦の平均生活費を月39万8,000円、教育費を月約2万3,000円として紹介している。
同記事が比較した全国の教育費は1万446円で、東京の数値は約2倍である。
ただし、この数字は東京都40代全員の生活費を意味するものではない。世帯構成や住宅状況、子どもの人数などによって支出額は大きく変わるため、特定条件の家計分析として見る必要がある。
それでも重要な示唆はある。
東京では「収入が高い」というアクセルだけでなく、「支出も大きくなりやすい」というブレーキを同時に見なければならないということだ。
例えば、地方より手取り収入が月8万円多くても、住居費や教育費などが月8万円多ければ、毎月の資産形成余力は同じである。
家計の実力は額面年収では決まらない。
収入-生活費-近い将来に必要な支出=資産形成へ回せる金額
この残額を毎年どれだけ確保できるかが重要なのである。
40代ではさらに話が複雑になる。
子どもがいる家庭なら高校・大学進学が近づき、教育費が膨らみやすい。住宅購入世帯なら住宅ローンや修繕費が残り、親の年齢によっては介護も現実的な問題になる。
同時に、自分たちの老後資金もそろそろ「そのうち考える」で済ませられない。
つまり40代とは、教育・住宅・親・老後という複数の資金需要が重なりやすい年代なのだ。
だからこそ、東京の40代家計を全国中央値500万円との単純な勝ち負けで評価するのは危険である。
「貯金500万円」は東京の40代にとって多い?少ない?
二人以上世帯で金融資産500万円なら、J-FLECの2025年全国40代中央値と同じ水準である。
しかし、500万円あれば安心という意味ではない。
平均値を見ると、この点はさらに分かりやすい。
全国40代の二人以上世帯では平均1,486万円に対して中央値500万円、単身世帯では平均859万円に対して中央値100万円だ。
平均と中央値には大きな差がある。
金融資産は一部の高額保有世帯によって平均が引き上げられやすいため、「平均=一般的な家庭」と考えてはいけない。
例えば5世帯の金融資産が、
- 100万円
- 200万円
- 300万円
- 400万円
- 1億円
だったとする。
中央値は300万円だが、平均は2,200万円になる。
300万円持っている人が平均2,200万円と比較すれば、1,900万円も足りないように見える。
だが、比較対象として平均値が大きく引っ張られているのである。
総務省統計局の2024年家計調査でも、二人以上世帯全体の貯蓄現在高は平均1,984万円だった一方、貯蓄保有世帯の中央値は1,189万円で、平均額を下回る世帯が約3分の2を占めている。
ただし、この総務省データとJ-FLECでは調査対象や「金融資産」「貯蓄」の定義が異なるため、数字を直接比較するためではなく、平均値が典型的な世帯を示すとは限らない例として見るべきである。
では中央値500万円ならどうか。
これも合格ラインではない。
中央値は単に「順位で真ん中付近」を示す数字であり、あなたの生活防衛資金、教育費、住宅費、老後資金を計算して決めた金額ではないからだ。
学校でいえば、クラスの中央値を知っただけである。
志望校に必要な点数は別に計算しなければならない。
東京在住40代が全国中央値を見る目的は、世間の中で自分がどのあたりにいるかを大まかに知ることで十分である。
そこで安心したり絶望したりするのではなく、次に自分の必要額を計算する。
この順番を崩してはいけない。
東京在住40代の家計は「目的別資産充足率」で見る
ここからは筆者としての分析である。
東京在住40代の貯金を評価するなら、私は総額だけではなく「目的別資産充足率」を見るべきだと考える。
難しい概念ではない。
「将来必要になる金額に対し、現時点で何%準備できているか」を目的別に分解するだけである。
40代夫婦のモデルケースで考えてみよう。
仮に金融資産が700万円あり、次のような家計だったとする。
- 世帯年収:700万円
- 毎月の最低生活費:30万円
- 生活防衛資金の目標:180万円
- 今後5年以内の教育費として必要:400万円
- 老後用として現時点で準備したい額:600万円
- 現在の金融資産:700万円
この家庭が700万円をただ一つの預金口座で管理していると、「全国40代中央値500万円より200万円多い。そこそこ順調だ」と考えたくなる。
しかし目的別に分ければ見え方は変わる。
仮に現在の700万円を、
- 生活防衛資金180万円
- 5年以内の教育資金320万円
- 老後用資金200万円
と考える。
すると充足率は、
- 生活防衛資金:180万円÷180万円=100%
- 教育資金:320万円÷400万円=80%
- 老後用資金:200万円÷600万円=約33%
となる。
総額では全国中央値を上回っていても、教育費はまだ80%、老後用資金は約33%しか準備できていない。
つまり「700万円ある」という一言では、家計の状態を正確に説明できないのである。
逆に金融資産が450万円しかなくても、子どもの教育費をすでに別枠で準備できており、生活防衛資金を確保しながら年間150万円ずつ長期資金を積み増せる家庭なら、数年後の見通しは悪くない。
品質管理でも、完成品の総重量が規格内だからといって「全工程問題なし」とは判断しない。
原料、製造工程、温度、異物検査、表示などを項目ごとに確認し、どこにリスクが残っているのかを見る。
家計も同じだ。
金融資産総額だけを見るのではなく、何のための金なのかを分解する。
これだけで「500万円あるから大丈夫」「中央値を下回ったから危険」という雑な判断から抜け出せる。
東京40代は「残高」と「資産形成速度」をセットで見る
もう一つ、私が重要だと考えるのが資産形成速度である。
計算方法は単純だ。
今年末の純金融資産-前年末の純金融資産
を確認すればよい。
投資商品の値動きが大きい場合は入出金額も分けて見る必要があるが、少なくとも「一年間で家計資産が増えているのか、減っているのか」は確認したい。
例えば東京在住40代の2世帯を比べてみる。
A家は現在800万円を持っているが、教育費などで毎年100万円ずつ金融資産が減っている。
B家は現在450万円だが、家計を黒字化して毎年150万円ずつ積み増している。
運用益を考えず単純計算すると、5年後はこうなる。
A家は、
800万円-100万円×5年=300万円
B家は、
450万円+150万円×5年=1,200万円
現時点の残高だけならA家のほうが350万円多い。
しかし5年間の流れまで見れば完全に逆転する。
家計は写真ではない。
動画として見る必要がある。
40代では特に重要だ。
教育費など一時的な支出で金融資産が減る年があっても、それが計画済みの支出なのか、慢性的な家計赤字なのかでは意味がまったく違う。
私なら東京在住40代の家計を次の4項目で確認する。
- 全国40代中央値と比べた現在の金融資産額
- 生活防衛資金と5年以内に必要な現金
- 教育・住宅・老後など目的別の資産充足率
- 過去1年間の純資産増減額
全国中央値は、この4項目のうち一つにすぎない。
東京に住んでいると、周囲には高所得者も多い。
数千万円、場合によっては億単位の資産を保有する世帯も当然存在する。
しかし、その数字を眺めて焦っても家計は1円も改善しない。
見るべき相手は隣の家庭ではない。
5年後、10年後の自分自身である。
東京在住40代の貯金中央値をどう判断すべきか?
ここまでの事実とデータを踏まえた筆者の結論は明確である。
「東京在住40代の貯金中央値はいくらなのか」という疑問に対して、根拠のない推定値を作るべきではない。
全国40代については、J-FLECの2025年調査から金融資産中央値として、
二人以上世帯500万円
単身世帯100万円
という参考値を確認できる。
東京都については、総務省の全国家計構造調査などから所得・金融資産・預貯金・負債などに関する地域データそのものは存在する。
2019年には東京都の総世帯年間収入が629.7万円で47都道府県中もっとも高かった。
しかし、「東京都」「40代」「J-FLECと同等の金融資産定義」「中央値」というすべての条件を合わせた数字を、今回確認した公的資料から明確には取り出せない。
ならば、東京40代の貯金中央値を700万円、800万円などと推定して断定してはいけない。
検索ユーザーが数字を求めているからといって、数字を作ればよいわけではない。
品質管理の現場で、検査していない製品に「合格」の判定を出せないのと同じである。
一方、「東京40代の中央値が分からないなら役に立たない」と考える必要もない。
全国中央値500万円または100万円を基準点として使い、その後に自分の家計条件を重ねればいい。
東京で月30万円の最低生活費が必要なら、生活防衛資金を何カ月分確保するのか。
3年後に子どもの大学進学があるなら、それまでに現金でいくら必要なのか。
住宅ローンはいつ終わるのか。
老後資金として毎年いくら積み立てられるのか。
前年より金融資産は増えているのか。
ここまで数値化すれば、「東京の普通はいくらだろう」という答えの出にくい競争から抜け出せる。
私は、40代で本当に恐れるべきなのは全国中央値を下回ることではないと考える。
何のために、いつまでに、いくら必要なのかを把握しないまま50代に入ることのほうがはるかに危険である。
東京だから仕方ない。
教育費が高いから仕方ない。
仕事が忙しくて家計を見る時間がない。
そう言っている間にも、教育費の支払日は近づき、住宅ローンは引き落とされ、老後までの残り時間は短くなる。
数字から目を背けても、数字の側が消えてくれることはない。
40代なら、まだ軌道修正できる。
全国中央値を見て終わるのではなく、そこをスタート地点にしてほしい。
まとめ
東京在住40代だけの「貯金中央値」について、全国と同じ条件で比較できる公的な数字は、今回確認した資料からは特定できない。
全国40代の参考値としては、J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査2025年」に基づく金融資産中央値が二人以上世帯500万円、単身世帯100万円である。
ただし、これは預貯金だけではなく株式や投資信託などを含む金融資産であり、日常語としての「貯金」と完全には一致しない。
東京都は所得水準が高く、2019年全国家計構造調査では総世帯の年間収入が629.7万円で都道府県中もっとも高かった。
その一方、東京では生活費や教育費などの負担も無視できない。
したがって、
「東京在住40代だから全国中央値500万円より多く持っているはずだ」とは言えない。
そして全国中央値500万円を超えていても、それだけで安心とも言えない。
生活防衛資金、教育資金、住宅関連費、老後資金を目的別に分け、「必要額に対して何%準備できているか」を確認する。
さらに前年末と今年末を比較し、金融資産が年間でいくら増減しているかを見る。
「現在の残高×目的別充足率×資産形成速度」まで確認して初めて、40代家計の現在地が見えてくる。
他人の中央値は参考資料でしかない。
あなたの人生に必要な金額を決めるのは、東京の平均でも全国の平均でもない。
5年後、10年後に予定されているあなた自身の支出である。
よくある質問
東京在住40代の貯金中央値はいくらですか?
今回確認した公的資料では、「東京都在住」「40代」「中央値」という条件をそろえ、全国40代と同条件で比較できる金融資産中央値は特定できない。
全国の参考値では、J-FLECの2025年調査に基づく40代の金融資産中央値は、二人以上世帯500万円、単身世帯100万円である。
東京の40代は全国より貯金が多いですか?
東京都は所得水準の高い地域だが、それだけで40代の金融資産中央値が全国より高いとは判断できない。
2019年全国家計構造調査では東京都の総世帯年間収入は629.7万円で都道府県中もっとも高かったが、東京では生活費や教育費などの負担も考慮する必要がある。
40代で金融資産500万円あれば安心ですか?
二人以上世帯なら、金融資産500万円は2025年の全国40代中央値と同水準である。
ただし中央値は家計の合格ラインではない。生活防衛資金、教育費、住宅関連費、老後資金など、自分の将来支出に対して十分かを目的別に確認することが重要である。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター

