40代が今選ぶのは「NISAか積立NISAか」ではない。旧つみたてNISAは終了し、2024年以降は現行NISAの2つの投資枠をどう使うかが答えである。
つまり比較すべきは、つみたて投資枠を中心に使うのか、成長投資枠まで併用するのかだ。40代では投資枠の大きさより、教育費・住宅費・老後資金の「使う時期」を分けて考えることが重要である。
40代はNISAと積立NISA、結局どっちが得なのか?
2024年以降、「一般NISAとつみたてNISAのどちらを選ぶか」という二者択一はなくなった。現在は1つのNISA制度の中で、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる。
まず用語を整理しよう。
「NISAと積立NISAはどっちが得?」と検索すると、現在のNISAと旧制度のつみたてNISAが混在した情報にぶつかりやすい。
金融庁「2023年までのNISA」によれば、旧制度では一般NISAとつみたてNISAが存在し、2024年以降は両制度で新規購入できない。すでに購入した商品については、旧制度の非課税期間に従って保有を続けられる。金融庁+1
旧つみたてNISAは年間40万円まで、非課税保有期間は最長20年間。旧一般NISAは年間120万円まで、非課税保有期間は最長5年間だった。
それが2024年1月から大きく変わった。
金融庁「NISAを知る」によれば、現行NISAではつみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円となり、併用すれば年間最大360万円まで投資できる。非課税保有期間は無期限である。金融庁
整理するとこうなる。
比較項目 旧つみたてNISA 旧一般NISA 2024年以降のNISA
新規買付 2023年まで 2023年まで 可能
年間投資枠 40万円 120万円 最大360万円
非課税保有期間 20年 5年 無期限
2024年以降の位置づけ 運用のみ継続 運用のみ継続 現行制度
現在の主な枠 ― ― つみたて投資枠+成長投資枠
したがって、40代が今考えるべき問いは「NISAか積立NISAか」ではない。
毎月の長期積立をつみたて投資枠で行い、さらに投資できる余裕資金があるなら成長投資枠をどう使うか。
これが現在の制度に即した考え方である。
筆者としては、特に投資経験が浅い40代なら、まずつみたて投資枠を資産形成の土台として考える方法が分かりやすい。
ただし、これは金融庁が「40代はそうすべき」と推奨しているわけではない。家計と投資期間を踏まえた私自身の判断である。
すでに十分な現預金があり、教育費や住宅関連費も別に確保でき、投資商品の値動きを理解している人なら、最初から両枠を利用する選択肢もある。
得か損かを決めるのは枠の名前ではない。その金をいつ使うのかである。
なぜ2024年から新NISAへ変わったのか?
2024年の制度改正は単なる名称変更ではない。家計の安定的な資産形成を後押しするため、NISAが抜本的に拡充・恒久化された。
ここを知っておくと、「なぜ年間360万円もの枠が用意されたのか」が見えやすくなる。
金融庁は「資産運用立国について」で、日本の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資へ向かい、企業価値向上の恩恵が家計へ還元され、それがさらに投資や消費につながる「成長と分配の好循環」を重視していると説明している。
その流れの中で、2022年11月に策定された「資産所得倍増プラン」などを踏まえ、2024年1月からNISAの抜本的拡充・恒久化が実施された。金融庁+1
制度変更で重要なのは主に次の点だ。
- つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる
- 年間投資枠は合計最大360万円
- 非課税保有期間が無期限
- 非課税保有限度額は合計1,800万円
- 制度が恒久化された
旧制度では「今年から始めたら非課税期間を何年確保できるか」という期限も意識する必要があった。
現行制度では非課税保有期間が無期限になったため、40代にも使いやすさは増している。
私はここに、40代にとって大きな意味があると考えている。
40代は20代ほど運用期間を長く取れない一方、収入が増えたり、住宅ローンや教育費の負担が数年後に軽くなったりする人も多い。
そのため、今すぐ満額を投資できなくてもいい。
例えば45歳時点では月3万円、教育費負担が軽くなった50歳から月7万円、住宅ローン終了後にさらに増額する――そんな家計変化に合わせた使い方もできる。
金融庁自身もNISAの活用事例として、少額の積立から始め、収入増加に合わせて積立額を増やすケースを示している。金融庁
制度が恒久化された以上、「今年枠を使わなければ人生終了」と焦る必要はない。
これは40代にとって極めて重要なポイントである。
新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は何が違う?
つみたて投資枠は長期・積立・分散投資を行いやすい枠、成長投資枠は上場株式なども含めてより幅広い商品を選べる枠である。両者は競合ではなく併用できる。
金融庁「NISAを知る」の制度内容を整理すると、主な違いは次のとおりだ。金融庁
比較項目 つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無期限 無期限
主な対象 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託など
2枠の併用 可能 可能
筆者が考える役割 長期資産形成の土台 余裕資金による追加投資
2つを合わせた非課税保有限度額は1,800万円である。
このうち成長投資枠として利用できるのは1,200万円まで。一方、つみたて投資枠だけで1,800万円を使い切ることは可能だ。金融庁+1
もう一つ覚えておきたいのが、売却したときの扱いである。
現行NISAでは商品を売却すると、その商品を購入したときの金額、つまり簿価に相当する非課税保有限度額を翌年以降に再利用できる。
例えば100万円で購入した商品を売却した場合、売却時に120万円へ値上がりしていても、再利用できる非課税保有限度額は取得価額ベースの100万円分という考え方になる。金融庁の資料でも、非課税保有限度額は簿価残高で管理される仕組みが示されている。金融庁+1
ただし誤解してはいけない。
売却した瞬間にその年の年間投資枠が増えるわけではない。
つみたて投資枠の年間120万円、成長投資枠の年間240万円という上限は別に存在する。
また、2023年までの旧NISAで持っていた商品は現行NISAの1,800万円とは外枠で管理され、旧制度の商品を売却したからといって現行NISAの非課税保有限度額が増えるわけではない。金融庁
制度の数字は、数字だけ暗記すると事故を起こす。
品質管理の現場でも「基準値」だけ見て、測定条件や適用範囲を読まなければ判断を誤る。
NISAも同じである。
360万円、1,800万円という数字だけでなく、「何の上限なのか」まで理解して使うべきだ。
なぜ40代はつみたて投資枠を軸に考えやすいのか?
40代につみたて投資枠が使いやすい理由は、年齢そのものではない。教育費や住宅費を守りながら、10年以上先の資金だけを長期運用へ回しやすいからである。
40代で最も警戒したいのは、「もう遅い」という焦りだ。
焦りは投資額を必要以上に増やしやすい。
しかし40代には、20代とは違う事情がある。
子どもの高校・大学進学、住宅ローン、住宅修繕、車の買い替え、親への支援、そして自分の老後。
資産形成を加速したい時期と、大きな支出が発生する時期が重なりやすいのである。
ここで金の「使用期限」を無視すると危ない。
例えば48歳、子どもは高校2年生。3年以内に大学進学費用として300万円程度を使う予定があるとする。
一方、老後資金として使うのは65歳以降だとする。
同じ300万円でも性格はまったく違う。
大学進学費用は3年後に必要になる。
老後資金なら17年以上先である。
この2つを同じ株式型投資信託へ入れてしまえば、大学進学直前に相場が急落したとき、教育費を確保するため安値でも売却しなければならない可能性がある。
「長期で持てば回復するかもしれない」は何の慰めにもならない。
支払日が決まった金には、相場回復を待つ自由がない。
だから私は、40代の家計をまず次の3層に分ける方法を勧めたい。
- 生活防衛資金:急な収入減や修理などに備え、すぐ使える状態で置く資金
- 近い将来に使う予定資金:教育費、住宅修繕、車など数年以内に用途がある資金
- 長期間使わない資金:老後など、10年以上先を想定できる資金
このうち、NISAで価格変動のある商品へ投資する中心候補になるのは3番目である。
もちろん「5年」「10年」という期間が法律上の安全ラインなのではない。
どの程度の値下がりを許容できるか、他にどれだけ現金を保有しているか、投資商品が何かによって判断は変わる。
だが、投資商品を選ぶ前に、金を使う時期を決める。
この順序だけは崩してはいけない。

つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託を対象とする仕組みである。金融庁
毎月決まった金額を自動積立にすれば、相場が上昇したときに興奮して買い増しし、下落したときに怖くなって止めるといった感情的な行動も抑えやすい。
私は品質管理の仕事で、再現性を高めるには人間の気分や勘に依存する工程を減らすことが重要だと何度も痛感してきた。
投資も似ている。
毎月無理のない金額を自動で積み立てる。
家計条件が変わったときだけ見直す。
その仕組みを淡々と続ける。
派手さはない。
だが40代に必要なのは、短期間で過去20年を取り戻そうとするギャンブルではない。
残された十数年、二十年を壊さず使い切る設計である。
40代はいくら積み立てる?月10万円にこだわる必要はない
40代の適正積立額は「つみたて投資枠が月10万円だから」では決まらない。家計から近い将来の支出を除き、長期間使わない余裕資金から決めるべきだ。
つみたて投資枠は年間120万円である。
12カ月で均等に投資すれば月10万円となる。
しかし、ここで数字に支配されてはいけない。
月10万円は制度上限を12で割った数字であって、あなたの適正投資額ではない。
金融庁のNISA活用事例でも、月1万円から積立投資を始め、収入の増加に合わせて積立額を増やすケースが紹介されている。つまり制度は、最初から上限まで投資することを前提にしたものではない。金融庁
40代なら、例えば次のように家計条件によって積立額は変わって当然である。
45歳で高校生の子どもが2人おり教育費負担が大きいなら、当面は月2万〜3万円しか余力がないかもしれない。
一方、50歳で子どもが独立し、住宅ローンも終わり、十分な生活防衛資金もあるなら、それまで教育費へ回していた月5万円をNISAへ追加できるかもしれない。
ここで重要なのは、月3万円と月10万円のどちらが優秀かではない。
家計を壊さず継続できるかである。
年間360万円という数字を見ると、「枠を空けたら損をする」と感じる人もいるだろう。
だが、それは制度を目的化している。
NISAの年間投資枠はノルマではない。
今年使わなかった年間投資枠を翌年へそのまま繰り越せるわけではないが、だからといって教育費を削ったり、生活防衛資金まで投じたりする理由にはならない。
非課税制度を最大限使うために家計を危険にさらす。
それでは順序が逆だ。
私なら積立額を次の順番で決める。
生活防衛資金を確保する。近い将来使う資金を取り分ける。その後に残る長期資金から、無理なく継続できる積立額を設定する。
この考え方なら、相場の下落局面でも生活費のために慌てて売却する可能性を抑えやすい。
「満額投資した」という達成感に価値はない。
必要なのは、家計が苦しい年にも破綻しない仕組みである。
40代で成長投資枠まで使うべき人は?
成長投資枠が向くのは、生活防衛資金と近い将来使う金を確保したうえで、さらに長期運用できる余裕資金が残る40代である。
成長投資枠は年間240万円まで利用でき、上場株式や投資信託など、つみたて投資枠より幅広い商品が対象になる。金融庁
ここで注意したいのが「成長」という名前だ。
成長投資枠を使えば、資産がより成長するという意味ではない。
投資対象によっては大きく値下がりする可能性もある。
NISAは元本保証の商品ではなく、一定の条件のもとで投資による利益を非課税にする制度だ。
私は40代で成長投資枠を積極的に利用しやすい条件を、次のように考えている。
生活防衛資金が確保できている。
数年以内の教育費・住宅費も別に置いてある。
そのうえで長期間使う予定のない資金が残っている。
そして、購入しようとしている商品の特徴と値下がりリスクを理解している。
これらを満たしているなら、つみたて投資枠に加えて成長投資枠を利用する意味はある。
逆に、大学進学費用が目前なのに「240万円の枠を使わないのはもったいない」と投資額を増やす必要はない。
40代では「何%のリターンを狙えるか」以上に、必要なタイミングで資産を投げ売りしなくて済むかが重要になる。
私はこれを「家計の耐久力」と考えている。
年齢が同じ45歳でも、預貯金300万円で子ども2人が高校生の家庭と、預貯金2,000万円で教育費も確保済みの家庭では、取れるリスクは違って当然だ。
だから「40代なら成長投資枠は危険」「40代だから全枠を急いで埋めろ」という両極端な答えは乱暴である。
見るべきは年齢だけではない。使う時期、現金余力、家計の耐久力である。
40代のNISAで重要なのは「資産の使用期限」である
ここからは私見である。
私は、40代のNISAで最も重要なのはどの商品を買うかより、資産ごとに使用期限を設定することだと考えている。
3年後の教育費。
7年後の住宅修繕費。
15〜20年後の老後資金。
同じ100万円でも、使う日が違えば取れるリスクは違う。
この違いを無視し、すべての余剰資金を「NISAなら得だから」という理由で株式へ入れるのは危うい。
40代は焦りやすい。
「20代から始めていればよかった」
「もう老後まで20年しかない」
「周囲はもっと投資している」
こう考え、一気に投資額を増やしたくなる。
しかし、過ぎた20年はレバレッジを上げても戻らない。
むしろ無理な投資をすれば、これから使える20年まで台無しにしかねない。
例えば45歳なら65歳まで20年ある。
47歳でも18年だ。
十分な余裕資金を確保できるなら、長期投資を検討できる時間はまだ残っている。
重要なのは、その時間を途中で失わないことである。
教育費が重い5年間は月3万円。
教育費が終わったら月6万円。
住宅ローンが終わったら月10万円。
こうした増額型でもいい。
金融庁の活用例にも、少額から始めて収入の変化に合わせて積立額を増やす考え方が示されている。金融庁
40代には「最初から満額でなければ意味がない」という思い込みこそ不要なのだ。
私は品質管理で、最終検査だけを厳しくしても品質は安定しないと考えている。
原材料、工程、設備、作業条件。
上流で設計を整える必要がある。
資産形成も同じだ。
投資信託のランキングを眺める前に、生活費、教育費、住宅費、老後資金を分ける。
それから投資額を決める。
銘柄選びは下流工程だ。家計設計こそ上流工程である。
これが、私が40代のNISAで最も重視したい視点だ。

なお、老後専用資金についてはiDeCoも選択肢になる。
iDeCo公式サイトによれば、iDeCoは自分で掛金を拠出して運用する年金制度であり、資産は原則として60歳まで引き出せない。iDeCo公式サイト+1
そのため私は、
60歳まで使わないと決められる老後資金はiDeCoの候補、途中で使う可能性を残した長期資金はNISAの候補
という役割分担で考えると整理しやすいと思っている。
ただしiDeCoの優先度は所得、勤務先の企業年金制度、加入区分などでも変わる。
本記事の中心はあくまでNISAなので、ここでは深追いしない。
大事なのは制度名から決めないことだ。
「いつ使う金なのか」を先に決めれば、制度の役割は後から見えてくる。
40代はNISAと積立NISAどっちが得?結論は「現行NISAを使い分ける」
結論をまとめよう。
2023年までは一般NISAと旧つみたてNISAという制度があり、旧つみたてNISAは年間40万円、旧一般NISAは年間120万円の投資枠だった。
しかし2024年以降、旧制度での新規購入はできない。旧制度ですでに購入した商品については、旧一般NISAなら購入時から5年間、旧つみたてNISAなら20年間という従来の非課税期間で保有を続けられる。金融庁+1
現在比較すべきなのは、現行NISAのつみたて投資枠と成長投資枠である。
つみたて投資枠は年間120万円。
成長投資枠は年間240万円。
合計年間360万円。
非課税保有限度額は合計1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円まで。非課税保有期間は無期限である。金融庁+1
だが40代なら、この数字から投資額を決めてはいけない。
まず生活防衛資金を確保する。
次に教育費、住宅修繕、車など近い将来の予定支出を分ける。
そのうえで、長期間使う予定のない資金をNISAへ回す。
投資経験が浅い人なら、つみたて投資枠を中心に長期・積立・分散を検討する方法が分かりやすいというのが私の考えだ。
さらに余裕資金があり、商品の性質やリスクを理解しているなら成長投資枠も利用すればいい。
逆に、家計に余裕がないなら年間120万円どころか、月10万円を目指す必要すらない。
NISA枠は目標ではなく道具である。
40代に必要なのは、「どっちが得か」という制度比較だけではない。
どの金を、いつ使い、そのうちいくらなら長期投資へ回せるのか。
ここを決めることだ。
焦ってアクセルを踏むな。
だが「もう遅い」と何もしない言い訳も捨てよ。
40代にはまだ十数年、二十年という時間を確保できる人もいる。
その時間を最大限生かすために、まず家計の土台を整える。
そして無理のない金額からNISAを使う。
それが、私は最も再現性の高い40代の資産形成だと考えている。
よくある質問
40代はNISAと積立NISAのどちらを選べばいいですか?
2024年以降は「NISAか積立NISAか」という二者択一ではない。
旧つみたてNISAと旧一般NISAでは2024年以降、新規購入できず、現在は1つのNISA制度の中で「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる。金融庁+1
投資経験が浅い40代なら、長期間使わない資金をつみたて投資枠で積み立て、さらに家計に余裕がある場合に成長投資枠を検討する方法が分かりやすいと筆者は考えている。
40代からNISAを始めても遅くないですか?
年齢だけで「遅すぎる」とは言えない。
現行NISAは非課税保有期間が無期限となり、制度も恒久化された。金融庁+1
例えば45歳から65歳までなら20年ある。ただし、数年以内に使う教育費や住宅費まで投資へ回すのではなく、長期間使わない余裕資金を明確にして始めることが重要だ。
40代はNISAを毎月10万円積み立てるべきですか?
必ずしも月10万円にする必要はない。
月10万円とは、つみたて投資枠の年間120万円を12カ月で均等に使った場合の金額にすぎない。金融庁
生活防衛資金と近い将来の支出を確保したうえで、相場が下落しても生活を圧迫せず続けられる金額を設定すべきである。
枠を埋めることではなく、必要な金を守りながら長期の資産形成を継続すること。それが40代のNISAで優先すべき目的だ。
本多鋭一
現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター
