40代でも歯を失う人はいる。だが、令和6年歯科疾患実態調査では40~44歳の平均現在歯数は28.1本であり、「40代なら抜けて普通」とはいえない。
「1本抜けたのは年齢のせいなのか」「同年代には平均何本残っているのか」。結論だけで安心せず、歯を失った原因まで確認することが40代では重要である。
40代で歯が抜けるのは普通?平均現在歯数は何本?
結論から言えば、40代で歯を失うケースはあるが、「40代になれば歯が抜けるのが普通」と考えるのは適切ではない。
厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要(令和7年12月修正版)」の表15「1人平均現在歯数(永久歯:15歳以上、年齢階級別)」では、40代の平均現在歯数は次のように示されている。
年齢 1人平均現在歯数 被調査者数
40~44歳 28.1本 442人
45~49歳 27.9本 498人
50~54歳 27.4本 554人
55~59歳 27.0本 584人
60~64歳 25.7本 665人
65~69歳 23.4本 862人
70~74歳 21.3本 1,074人
75~79歳 19.5本 999人
つまり、40代の平均像は「すでに何本も歯を失っている状態」ではない。平均では大部分の永久歯が口の中に残っている年代なのである。
令和6年歯科疾患実態調査は2024年10~11月に実施された。令和2年国勢調査の一般調査区から475地区を無作為抽出し、質問紙調査に加えて、会場で歯科医師による問診と口腔診査が行われている。
結果の概要は厚生労働省が2025年6月26日に公表した。その後、一時的に非公開となり、正誤情報を反映した概要が2025年12月24日に再公開されている。
ここで数字だけを眺めて終わってはいけない。
品質管理では「測定値」を見る前に、「何を、どの条件で測定した値なのか」を確認する。健康データも同じである。
28.1本なのに、永久歯は28本ではないのか?
ここは非常に誤解されやすい。
一般に「大人の歯は28本」と説明されることがあるが、これは上下左右4本の第三大臼歯、いわゆる親知らずを除いた本数である。親知らずまで含めれば、永久歯は最大32本となる。
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、「現在歯」を歯の全部または一部が口腔に現れているものと定義し、健全歯、未処置歯、処置歯に分類している。過剰歯は現在歯には含めない。
したがって、表15で40~44歳の平均現在歯数が28.1本となっていても矛盾ではない。現在歯数には条件を満たす親知らずも含まれ得るため、平均が28本をわずかに上回ることがあるのである。
これは重要なポイントだ。
「永久歯は28本だから、28.1本という統計はおかしい」と判断してはいけない。逆に28本から27.9本を引いて、「45~49歳では平均0.1本失っている」と計算することもできない。
調査で使われている指標の定義を無視して、勝手に別の数字へ変換してはいけないのである。
なお、ネット上では「40代では平均1.5本の歯を失う」などの数字を見かけることがある。しかし、厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要」の平均現在歯数と同じ条件・定義で、「40代は平均1.5本失う」と示した数値ではない。
40代の平均的な歯の状態を確認するなら、まず公的統計である40~44歳28.1本、45~49歳27.9本を基準に考えるべきだ。
平均値は安心するための数字ではない。
あなた自身の口の中に何本あり、どの歯に問題があり、なぜ1本を失ったのか。それこそが本当に確認すべき情報である。
40代で歯を失う原因は?歯周病・むし歯・破折に注意
40歳を迎えた瞬間に、歯へ寿命のタイマーが作動するわけではない。
40代で歯を失った場合に考えるべきなのは年齢そのものより、歯周病、う蝕(むし歯)、破折など、それまで積み重なってきた問題が表面化していないかという点である。
公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018年11月報告)では、抜歯の主原因は次の順だった。
- 歯周病:37.1%
- う蝕(むし歯):29.2%
- 破折:17.8%
- その他:7.6%
- 埋伏歯:5.0%
- 矯正:1.9%
- 不明:1.4%
ただし、ここで「40代の37.1%が歯周病で歯を失う」と読み替えてはいけない。
この調査は40代だけを対象にした全国人口調査ではない。
日本歯科医師会の第1種会員から抽出した歯科医師を対象に、2018年6月4日から10日までの1週間に歯科医院で行われた抜歯処置を質問紙で調査したものである。
調査対象5,229人に対して2,345人から回答があり、回収率は44.8%。抜歯処置を受けた患者は計6,541人、調査期間中の総抜歯数は8,003本だった。
つまり37.1%とは、この調査で記録された抜歯について「主原因が歯周病だった割合」である。
この条件まで理解して初めて数字は意味を持つ。
一方、40代にとって見逃せない結果もある。
同調査では、年齢階級別にみるとう蝕による抜歯割合は40歳以降に減少する一方、歯周病と破折の割合は35歳以降、年齢とともに高くなる傾向が報告されている。
これは「40代になったら必ず歯周病になる」という意味ではない。
だが、若い頃のように「むし歯さえなければ歯は大丈夫」と考えるだけでは不十分になってくることを示唆している。
歯周病は歯肉だけの問題ではない。進行すると、歯を支える歯槽骨などの歯周組織が破壊され、歯の支持が失われていく。
しかも厄介なのは、強い痛みがないまま進行する場合があることだ。
「痛くないから問題ない」
40代でこの判断に頼るのは危うい。
令和6年歯科疾患実態調査では、過去1年間に歯科検診・健診を受けた人の割合は63.8%だった。前回の令和4年調査の58.0%から上昇している。
ただし、全国の受診率が上がったからといって、あなたの歯周組織が健康になったわけではない。
見るべきなのは世間の平均ではなく、自分の歯肉の出血、歯周ポケット、むし歯、過去に治療した歯などの状態である。

40代で歯が1本抜けたら何を確認すべき?
40代で歯を1本失ったからといって、残りの歯まで次々に失うと決まったわけではない。
しかし、抜けた部分だけを補って「治療終了」と考えるのではなく、なぜその歯を失ったのかを確認することが重要である。
ここは私が品質管理の仕事で最も重視している考え方と共通する。
製造工程で不良品が1個発生したとき、その1個だけを廃棄して「問題解決」とはしない。同じ不良を生む原因が設備、原材料、作業条件、工程のどこかに残っていないかを調べる。
歯も同様である。
歯周病が原因で1本を失ったなら、他の歯の周囲にも同じような歯周組織の問題が存在していないかを確認する必要がある。
むし歯が重症化したなら、清掃状態だけでなく、歯間部、食習慣、過去の治療部分なども確認対象になる。
そして40代では、治療済みの歯をどう評価するかという視点も持っておきたい。
8020推進財団の2018年調査では、抜去された歯の状態を見ると「冠」が37.0%と最も多く、う蝕34.1%、健全18.6%、充填8.5%だった。
もちろん、「冠が入っている歯の37%が抜ける」という意味ではまったくない。
この数値はあくまで調査期間中に抜歯された歯の状態を分類した割合である。
しかし、過去に治療した歯だから永久に問題が起きない、とは考えないほうがいい。治療後も個々の歯の状態、歯周組織、噛み合わせなどを継続して評価する意味がある。
40代で歯を1本失ったなら、歯科医院では少なくとも次の観点を確認したい。
- 失った歯の直接的な原因は何だったのか
- 他の歯にも同じ原因が残っていないか
- 歯周ポケットや歯肉からの出血に問題はないか
- 未治療または再発したむし歯はないか
- 過去に治療した歯は安定しているか
- 歯間部を含めて清掃できているか
- 噛み合わせや歯への過度な負担に問題がないか
これは自己診断するためのチェックリストではない。
自分の口腔内を歯科医師や歯科衛生士と確認する際の視点である。
歯科の診断や治療方針は歯科医師が行う領域だ。私は歯科医師ではなく、ここで提示しているのは公的資料と一次調査を読み解いたうえでの情報整理である。
だからこそ、「ネットの記事で平均○本だったから自分も大丈夫」という自己判断には反対する。
平均値はあなたを診察していない。
1本失ったという事実を、残りの歯の状態を確認するきっかけへ変える。
それが40代では重要だと私は考える。
40代から歯を失わないために何をすべき?
40代だからといって、特殊な健康法へ走る必要はない。
必要なのは、毎日のセルフケアと歯科での専門的な確認を、自分の口腔状態に合わせて続けることである。
「毎日歯を磨いているから大丈夫」という人は多い。
だが重要なのは「磨いた」という行動ではなく、歯垢を適切に除去できているか、歯肉や歯周組織に問題が起きていないかという結果だ。
40代では、次のような変化を放置しないほうがいい。
- 歯磨きのときに歯ぐきから出血する
- 歯ぐきが腫れる
- 口臭の変化が気になる
- 歯ぐきが下がったように見える
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
- 歯が動くように感じる
- 噛んだときに違和感がある
- 過去に大きなむし歯治療を受けた歯がある
これらがあれば必ず特定の病気だという意味ではない。
症状だけで自己診断せず、気になる変化が続くなら歯科医院で評価を受けるべきである。
また、「3か月ごとなら安心」「半年に1回なら十分」と受診間隔を全員一律に決めるのも適切ではない。
必要なメインテナンス頻度は、歯周病やむし歯の状態、治療歴、口腔清掃状態などによって異なる。
自分に必要な間隔は、口腔内を評価した歯科医師や歯科衛生士と相談して決める。
セルフケアでは、歯ブラシだけで清掃しにくい歯間部への対策も考えたい。口腔内の状態に応じてデンタルフロスや歯間ブラシなどを使う方法がある。
ただし、歯石を自分で器具を使って削るような行為をする必要はない。
セルフケアで管理する領域と、専門家に任せる領域を分ける。
40代の健康管理では、この線引きも重要である。

40代の平均28本から将来をどう考える?
令和6年歯科疾患実態調査では、平均現在歯数は40~44歳28.1本、45~49歳27.9本である。
その後は50~54歳27.4本、55~59歳27.0本、60~64歳25.7本、65~69歳23.4本、70~74歳21.3本と、年齢階級が上がるにつれて少なくなっている。
ただし、ここで大きな誤読をしてはいけない。
この表は同じ人を40歳から70歳まで追跡したデータではない。
各年齢階級を調べた横断的な統計であるため、「40歳で28本ある人は70歳までに平均7本失う」といった個人の将来予測には使えない。
それでも40代にとって大切な示唆はある。
厚生労働省の同調査では、80歳で20本以上の自分の歯を有する「8020達成者」は、75歳以上85歳未満のデータから61.5%と推計された。
前回の令和4年調査では51.6%だったが、調査条件や対象規模が異なるため、単純に「2年間で10ポイント改善した」と個人レベルの変化のように捉えるべきではない。
注目すべきなのは、高齢期でも20本以上の自分の歯を持つ人が相当数いるという事実だ。
「歳を取れば歯はなくなって当然」と最初から諦める理由にはならない。
私は40代の平均28本という数字を、単なる同年代との比較には使いたくない。
むしろ、「今ある歯を60代、70代、80代へどれだけ持ち越せるか」を考える出発点として使うべきだと考えている。
40代は仕事でも家庭でも責任が増え、「歯医者に行く時間がない」と後回しにしやすい年代だろう。
だが、問題がないことと、問題を確認していないことはまったく違う。
ここを混同してはいけない。
私見では、40代で歯を1本失ったときに最も危険なのは「もう歳だから仕方ない」という納得である。
年齢は背景の一つではあっても、失った歯の直接原因を特定してくれるわけではない。
歯周病だったのか。
深いう蝕だったのか。
破折だったのか。
別の要因だったのか。
原因が違えば、残る歯について警戒するポイントも変わる。
品質管理では、結果の異常を見つけたら原因へ戻る。
40代の歯も同じだ。
平均何本抜けるかではなく、今ある歯を何本将来へ持ち越せるか。
この視点へ切り替えることが、40代の歯の健康を考えるうえで最も重要だと私は考えている。
まとめ
40代で歯を失うケースはある。しかし、「40代になれば歯が抜けるのが普通」と考える根拠はない。
厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要(令和7年12月修正版)」表15では、1人平均現在歯数は40~44歳で28.1本、45~49歳で27.9本だった。
28.1本が「永久歯は通常28本」という説明を上回るのは、一般的な28本が親知らずを除いた数である一方、歯科疾患実態調査の現在歯では条件を満たす第三大臼歯も対象になり得るためである。
また、公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査」では、2018年の調査期間中に記録された8,003本の抜歯について、主原因は歯周病37.1%、う蝕29.2%、破折17.8%だった。40代限定の割合ではないが、歯周病と破折による抜歯割合は35歳以降に年齢とともに高くなる傾向が示されている。
すでに歯を1本失っているなら、平均値を見て安心する前に原因を確認する。
まだ28本前後残っているなら、「今まで大丈夫だったから」と放置しない。
40代は歯を失って当然の年代ではない。今ある歯を高齢期まで持ち越すため、管理の質を見直す年代である。
仕事が忙しいことと、口の中の問題が待ってくれることは別問題だ。
本気で自分の身体を守るなら、平均値を眺めて終わるな。自分の現在地を確認し、必要な行動へ変えてほしい。
よくある質問
40代で歯が1本抜けるのは普通ですか?
40代でも歯を失う人はいるが、「40代なら1本抜けて普通」とはいえない。
厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要」では、平均現在歯数は40~44歳28.1本、45~49歳27.9本である。歯を失った場合は年齢だけで片付けず、歯周病、う蝕、破折など原因を歯科医師に確認することが重要だ。
40代では平均何本の歯が残っていますか?
令和6年歯科疾患実態調査では、40~44歳が平均28.1本、45~49歳が27.9本である。
調査の「現在歯」は歯の全部または一部が口腔内に現れている永久歯を対象としており、条件を満たす親知らずも含まれ得る。そのため、親知らずを除いた一般的な永久歯28本と単純比較して「平均喪失本数」を計算することはできない。
40代で歯を失う一番の原因は歯周病ですか?
40代だけを対象とした最新全国代表値として「○%が歯周病」と断定することはできない。
一方、公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査」では、全年齢を含む調査で抜歯の主原因は歯周病37.1%が最多で、う蝕29.2%、破折17.8%だった。同調査では歯周病と破折による抜歯割合が35歳以降に高くなる傾向も報告されている。
執筆:本多鋭一(現役品質管理マネージャー兼ヘルスケアライター)
